2023年度の政府予算案編成で、厚生労働省の概算要求額が実質的に過去最大となり、省庁別でも最大級となった。財務省の資料によると、一般会計の要求総額は110兆円にのぼり、9年連続で100兆円を超えた。厚労省は全体の約3分の1にあたる33兆2644億円で、こども家庭庁へ事業を移管しても、今年度当初予算と比べて6340億円増加した。厚労省は「成長と分配の好循環に向けた『人への投資』」を政策の柱に据える方針。新規事業などを中心に、来年度の雇用・労働分野の施策を点検する。(報道局)
厚労省は23年度の概算要求で、「新しい資本主義」の実現に向けた労働分野の旗印に(1)人への投資パッケージ、円滑な労働移動の推進(2)多様な人材の活躍促進(3)多様な働き方への支援、最低賃金・賃金の引き上げに向けた事業者への支援、労働者・フリーランスの働く環境の整備――を掲げた。
(1)の施策としては「企業のデジタル人材の育成」「キャリアアップ助成金による正社員化」「在籍型出向を活用したスキルアップ支援」など。(2)では「男女の賃金差異の開示を通じた女性活躍」「中小企業をはじめとした障害者の雇い入れ」「外国人労働者の雇用管理と労働移動の把握」など。(3)では「働く人のワークエンゲージメントの向上」「最低賃金引き上げの業務改善を実施した事業者への支援」などを掲げている。
本年度から継続する事業もあるが、中身を分析するとコロナ沈静化後のウィズ・コロナを意識した攻めの施策が目立つ。そして、将来を見据えて硬直化している雇用・労働のルールを揺り動かそうとする姿勢も垣間見える。人材サービス産業とのかかわりのある新規事業を軸に施策を掘り下げてみる。
来年度は概算要求の事業に加えて総合経済対策の内容も
10月中にも取りまとめる政府の総合経済対策では、重点項目として「人への投資と分配」を挙げ、「労働移動(転職)の円滑化」「リスキリング(学び直し)の促進」「構造的な賃金引き上げ」を示しており、「分厚い中間層」の形成には持続的な賃上げと労働市場の改革が不可欠という基本的認識に立っている。取りまとめの結果にもよるが、来年度は概算要求の事業に加えて総合経済対策の方針と内容も反映される見通しだ。
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