子供の生まれた男性が育児休業を取りやすくする「産後パパ育休制度(男性版産休)」が10月からスタートする。産後女性の大きな負担を軽減し、男女の共同育児を促進するため、介護・育児休業法を改正した一端だが、圧倒的に少ない男性の育休取得がこれで進むかどうか、フタを開けてみないとわからない要素が多い。(報道局)
新制度のポイントは、(1)出生時から8週間以内に、父親は最大4週間を2回に分けて取得できる(2)出生8週間以降は子供が1歳になるまで、父親と母親が交代で育休を取得できる(3)1歳になった子供が保育所に入所できない場合、2歳になるまで母親と父親が交代で育休を取得できる――の3点。
これまでにも父親の育休取得制度はあり、産後8週間までと1年まで2回の分割取得が可能。1年以後も保育所入所ができない場合は2回の分割取得ができる。ただ、8週間までの分割取得と1年までの3回目取得はできず、1年以降の分割取得もできない。
出産・育児における母親の負担軽減には父親のさらなる負担増加が必要であり、分割取得を増やす柔軟な制度にした。特に、8週までの2回分割取得は「産後パパ育休」と呼び、8週以後の育休とは別に取得できるようにした。「産後パパ育休」も含め、全体に父親が"コマ切れ"取得しやすいようにすることで、母親の体調に合わせたり、母親の復職を容易にしたりと、家庭の事情に合わせて利用できるようになる。
取得期間中は雇用保険から育児休業給付金(育休手当)が支払われ、半年までは7割弱、半年以降は5割程度だが、この期間中は健康保険料などの社会保険の支払いも免除されるため、実質的な手取りは7~8割ほどと推定される。また、労使協定を結んでいれば、産後パパ育休の期間中でも就業できる。従業員1000人超の大企業は来年4月から、こうした育休の取得状況の公表が義務化される。
一見する限り、日本のこうした育休制度の拡充は世界の最先端を行っているとされるが、それは男性の育休取得が貧弱で、女性の過大な負担が減らない実態の裏返しでもあり、日本が「育児後進国」であることを裏付けてもいる。
厚生労働省の指標に「育児休業取得率」があり、それをみると、女性の取得率は09年度ごろから80%を超える水準で推移しており、21年度は85.1%。これに対して、男性の場合は09年度で1.72%。その後、年々上昇を続け、20年度は12.65%と初の二ケタに乗せ、21年度は13.97%となった=グラフ。
女性の取得率の場合、分母となる「1年間の出産者」は出産前後も就労を続けている女性であり、出産前に退職した人は含まれていない。このため、産休・育休の取りにくい非正規などの女性は退職する人も多いことから、真の育休取得率は50%以下との推定も出ている。しかし、それを差し引いてもなお、男性と女性の取得率には雲泥の差があり、男性の伸び率を少数点二ケタまで表示しなければならないことがそれを物語っている。
さらに、問題は取得期間の短さだ。内閣府によると、...
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