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2022年7月25日

「70歳就業」に気乗り薄の企業

「65歳雇用」対応で手いっぱい?

 企業に社員の70歳までの就業確保措置を義務付けた改正高年齢者雇用安定法が施行され、4月で1年が経過したが、企業側の取り組みはあまり進んでいないようだ。努力義務で罰則規定がないこともあり、企業内の制度化は遅れている模様だ。労働力人口の減少が始まり、高齢者らの就業拡大で補う必要があるだけに今後の企業の動きが注目される。(報道局)

 現在の制度は、まず65歳までの措置として(1)65歳までの定年延長(2)定年制の廃止(3)65歳までの継続雇用(子会社なども含む再雇用、勤務延長)が義務化されており、継続雇用の場合も対象は「希望者全員が原則」としている。

 70歳までの就業確保措置については、(1)70歳までの定年延長(2)定年制の廃止(3)70歳までの継続雇用(4)70歳までの業務委託(5)70歳までの社会貢献事業への従事、を挙げている。(1)~(3)は65歳までと同じだが、(4)と(5)は「創業支援等措置」と呼ぶ退職後の雇用関係によらない制度で、導入する場合は労組などの同意が必要になる。

 これに対する企業側の対応は概して鈍い。厚生労働省が毎年公表している「高年齢者雇用状況等報告」によると、21年6月時点で70歳までの就業確保措置を講じている企業(従業員21人以上)の比率は25.6%に過ぎず、残る74.4%はまだ措置を講じていない。

sc220725.png 措置を講じている企業の場合も、(1)の定年延長は1.9%、(2)の定年廃止は4.0%、(3)の継続雇用は19.7%、(4)の創業支援等は0.1%に過ぎず、(1)~(4)を合わせても25%余程度しかない=グラフ。企業規模では、従業員21人~30人の零細企業では28.9%だが、規模が拡大するにつれて実施比率は下がり、同301人~500人の中堅企業では18.1%と10%台に下がり、同501人~1000人の大企業になると17.1%の最低となっている。大企業ほど、取り組みの鈍いことがわかる。

 厚労省の調査は改正法施行からまだわずかな期間しか経っていないためともみられるが、実際にはそうでもないようだ。施行から半年後の21年秋、経団連が会員約400社を対象に実施した「人事・労務に関するトップ・マネジメント調査」でも、「対応済み」は21.5%に過ぎず、「対応を検討中」が29.5%、「対応を検討予定」が38.6%となっている。対応済み・検討中の内容も、「70歳までの継続雇用」が94.3%を占め、それ以外は微々たる比率だ。

 また、「検討していない」の10.4%の企業に理由を聞いたところ、「努力義務のため」が44.6%の最多を占めた。高齢社員の雇用については公的年金の受給が絡み、「65歳受給開始」が標準となった現代では、給与も年金ももらえない「空白期間」を避けるため、企業に「65歳雇用」を義務化し、25年に"完成"させる予定。しかし、65歳以上の多くは年金受給者になるため、企業には70歳の雇用延長を努力義務としたものだ。もっとも、今後も高齢化の進展や財政の逼迫が続くことが予想されることから、企業の間では「70歳の努力義務がいずれは義務化されるのでは」との予測も根強い。

 企業の対応が鈍い最大の要因としては、旧来の「60歳定年制」を前提にした昇進・賃金制度の変更が困難なことが挙げられる。60歳定年は1986年の法改正に伴って一般化したが、それから40年近く経ったにもかかわらず、現在も8割ほどの企業が60歳定年のままだ。

 60歳の定年時に退職金を支払い、それ以後は契約社員、嘱託などの身分で希望者には65歳まで働いてもらう。ただし、役職からはずれ、責任もなくなるので、給与は大幅にダウンする。これが一般的な処遇で、60歳以降は「戦力」扱いしない企業が多い。その"予備軍"がかつて「窓際族」「壁際族」と呼ばれ、現代では「妖精さん」と奇妙な呼ばれ方をしている層で、若手社員からは「働いていないのに、給料だけは多い」と評判が悪い。

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