今年の春闘は企業の業績回復を反映して、3年ぶりに2%台の"大幅"賃上げとなることが確実になってきた。しかし、昨年来の物価上昇も本格化しており、物価上昇を上回る賃上げ水準になるかどうか、微妙な情勢となっている。実質賃金が伸びなければ消費回復の道筋は見えにくく、先行きはかなり視界不良だ。(報道局)
連合が発表した第5回回答集計(今月6日時点)によると、月例賃金の平均賃上げ額(加重平均)は6160円(前年同期比2.10%増)となった。これは3336労組、組合員約234万人の平均で、回答予定企業の7割ほどになる。
企業規模別にみると、労組員300人以上の企業(1044労組、約211万人)では6295円(同2.11%増)、同300人未満の企業(2292労組、約23万人)では4997円(同2.02%増)と、企業規模に関係なく2%台の賃上げとなっているのが今年の特徴だ。
しかし、一時金(ボーナス)は年間企業で4.89カ月分、156万4054円(同1万4746円減)、半年企業で2.40カ月分、約70万4362円(同1万3011円減)といずれも前年を下回っている。
一方、非正規社員については、時給ベースの賃上げ額(加重平均)は24.54円アップの1052.03円、月給ベースの賃上げ額は634円アップの5076円となり、賃上げ率は2.3%前後と正社員のアップ率をやや上回っている。
今年の賃上げ率が2%台に乗ったのは、19年の2.10%以来、3年ぶり。それ以前は13、17年を除くとほぼ2%台で推移してきたが、コロナ禍で経営側の姿勢が慎重になったため、20年は1.93%、21年も1.81%と2%を割り込む低迷ぶりだった。今年は再び2%台に乗せたことで、連合は「中小企業の健闘が目立ち、"賃上げの流れ"はしっかり引き継がれている」との「中間まとめ」を発表した。
しかし、「3年ぶりの2%台回復」とはいえ、結果は連合の目標だった「4%程度」、政府目標の「3%程度」のいずれにも届いていない。目標値の設置には様々な条件が必要なことから、「未達」を悲観視する必要は必ずしもないが、このレベルが決して十分でないことも確かだ。
国内市場を見渡せば、好材料もある。2年続いたコロナ禍で企業活動は大きな制約を受け、中でも個人消費が中心の対面型サービス業は大きな打撃を受けた。しかし、今年になってコロナの収束が視野に入り、社会・経済活動は正常化しつつある。この5月の大型連休期間中、国内観光地は"リベンジ消費"に燃える観光客であふれた。この勢いを夏休みまで継続しながら、コロナ感染が急増しなければ市場回復のスピードは速まり、雇用も回復するとみられる。
また、政府は人流緩和の一環として、6月から外国人観光客の訪日を徐々に解禁する方針で、インバウンド需要の回復にも大きな期待が生まれている。コロナ前の19年、外国人観光客は年間3200万人の最高を記録したが、20年以降は激減したまま。日本は世界的にはコロナ対策の「優等生」とみられており、そうした安心感も需要回復につながる要因になっている。
物価上昇もついに2%台、今後も続くか
その一方で、...
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