職業安定法上の募集情報等提供事業者(求人メディア)の対象を大幅に広げ、「届け出制」を導入する改正職安法が10月1日に施行される。現場の新たな運用ルールなどを定めた政省令・告示も固まり、6月上旬に公布される見通しだ。AIやITなどの進化に伴い、多種多様な「雇用仲介サービス」が広がる中、利用者である求人企業と求職者の保護を第一義に事業者の実態把握とサービス内容を踏まえた職業紹介との「境界整理」も進める。厚生労働省は「求人メディア支援室」(仮称)を新設して、改正職安法の実効性ある運用にあたる方針だ。(報道局)
厚労省は5月13日、労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会に政省令・告示案要綱を諮問し、同部会から「妥当と認める」との了承を得た=写真。月内に開かれる同分科会で正式に答申される運びで、政省令・告示は6月10日前後に公布。施行までの約3カ月間を中心に、Q&Aや事例などを交えたリーフレットを作成するなどして、事業者への周知徹底を本格化させる考えだ。
「雇用仲介サービス」には、職安法に位置づけられた職業紹介(許可事業)や既存の求人メディア以外にも、求人情報を集約化するアグリゲーターや人材データベース、SNS、スポットマッチング、クラウドソーシングなど、伝統的なイメージを超える多様なサービスが誕生している。入職経路として活用が急速に拡大しており、こうした「新形態サービス」の実態把握は的確な雇用政策を打ち出すうえで欠くことのできない状況にあった。
とりわけ、需給調整機能の一翼を担いながら急拡大する「新形態サービス」においては、職安法や労働基準法、労働者派遣法を把握した従来の人材サービス企業とは異なる分野から新規参入してくるケースも目立ち、労働法制の有識者から「玉石混交のプレーヤーが存在している。現行の法律やルールで対処できているのか」との指摘も挙がっていた。また、サービスを競い合う事業者間でも、活用する求人・求職者視点からも「労働市場整備」は急務となっていた。
今回の改正職安法で重要なのは、現場を管理監督する規制強化一辺倒ではなく、「マッチング機会を生み出す新たなイノベーションを阻害しない」という観点が盛り込まれている点だ。つまり、「新形態サービス」を需給調整の一翼を担う事業者と明確に位置付け、雇用仲介事業者が依拠すべきルールを明確化している。
需給調整事業課に連なる「支援室」の役割
改正職安法を含む雇用保険法改正案を審議していた3月の国会で、職業安定局長が答弁していた通り、厚労省は本省に求人メディアの実態把握や指導監督を行う新たな組織を設置して体制強化を図る。派遣や紹介事業などの法律を所管する需給調整事業課に連なる新設の「支援室」で、本格始動に向けて準備が進んでいる。2014年に誕生した職業安定局派遣・有期労働対策部(当時)に設置された「民間人材サービス推進室」(雇用政策課)とは別の機能を担う。
体制整備の背景として...
※こちらの記事の全文は、有料会員限定の配信とさせていただいております。有料会員への入会をご検討の方は、右上の「会員限定メールサービス(triangle)」のバナーをクリックしていただき、まずはサンプルをご請求ください。「triangle」は法人向けのサービスです。