日本の雇用情勢の改善傾向が目立つ中で、休業者だけが"高止まり"状態を続けている。休業者はいわば就労者と失業者の中間に位置する不安定な立場にあり、雇用調整助成金(雇調金)の原資問題にも絡むことなどから、政府もようやく対策に乗り出した。休業者は企業などに雇用されて給料などの支払いを受けているものの、実際には仕事をしていない人たちのことで、大多数は自宅での「待機組」となっている。(報道局)
総務省によると、新型コロナの第1波が押し寄せた2020年春から急増し、同年3月の251万人から4月に599万人、5月は425万人と一気に増えた。その後、テレワークの普及や出社勤務の再開などで減少し、概ね200万人台で推移。21年10月には166万人まで減り、3カ月連続で200万人台を割り込んでいた。ところが今年に入って再び増加し、1月が249万人、2月が242万人、3月が243万人と高止まりしたままだ=グラフ。
これを完全失業者数と比べると、もともとコロナ以前から多めに推移していたが、感染者の増加とともに急増し、20年は年間平均で65万人も多く、21年は大きく減ったものの、それでも失業者より13万人多い。今年に入るとその差はさらに開き、60万人台前半の差で推移しており、2年前に逆戻りした感がある。
休業者の内容をみると、今年3月の243万人のうち、雇用形態は自営業が33万人で、残りの200万人以上は雇用者。雇用者の半数近い91万人がパート、アルバイトなどの非正規従業員で占めている。業種では医療・福祉の36万人が最も多く、卸・小売業の28万人、製造業の26万人、教育・学習支援業の26万人、宿泊・飲食サービスの24万人などが多い。
コロナ禍の直撃を受けている小売り、宿泊、飲食、運輸といった業種を合わせると60万人を超え、全体の25%を占めている。この傾向はコロナ初期から続いているもので、ある種の"膠着状態"に陥っている。本来なら、解雇・雇い止めの対象になる人が多いとみられるが、「コロナ後」の人手不足の再来を見据えた企業側が雇用を維持しているため、と推測される。
成長産業・企業への労働移動を阻害
こうした休業者の高止まりを支えているのが、雇調金をはじめとする政府の一連の雇用維持政策だ。08年のリーマン・ショック当時、大量の非正規労働者が解雇された反省を踏まえ、政府は今回、雇調金の手厚い支給を条件に企業などに解雇を避けるよう、経済界などに繰り返し要請。それが奏功して完全失業率はピーク時でも3.0~3.1%という低い水準で推移し、21年後半からは2%台後半に沈静化している。「雇用不安」を防いだ点で、政策効果はあった。
一方、その裏返しとして、大きな問題に浮上しているのが雇調金の原資となっている雇用保険財政だ。コロナ禍の長期化によって支給額も増え続け、4月末で累計5兆円に達する見通しとなり、同保険の積立金が底をつく事態となった。このため政府は保険料の段階的な引き上げを盛り込んだ改正法案を出し...
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