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2022年1月31日

第6波のオミクロン株急拡大

企業自衛、再びテレワークへ

 新型コロナウイルスの感染はオミクロン株の急拡大によって、国内のインフラ全体に影響を及ぼし始めている。企業活動にも再び制約が強まり、自宅などでのテレワークが増えている。しかし、過去2年に及ぶコロナ禍で得た教訓が生かされているとは必ずしも言えないようだ。(報道局)

 多くの日本企業はテレワークの本格実施に消極的だ。日本生産性本部が定期実施している「働く人の意識調査」(1月時点)によると、テレワークで働いている人の比率はわずか18.5%で、昨年10月の前回調査から4.2ポイント低下する過去最低となった。テレワーク実施率は最初の感染拡大期の20年5月当時の31.5%が最高で、その後は20%前後で推移していたが、今回はオミクロン株以前の感染急減期だったことから、比率をさらに下げたとみられる。

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テレワーク増で?繁華街も閑散

 ただ、企業規模によって実施率はかなり異なり、従業員1001人以上の大企業が29.8%なのに比べ、同101~1000人の企業では22.0%、同100人以下ではわずか11.1%と大きな開きがある。中小企業に勤める人は全体の6~7割を占めていることから、中小企業の実施率の低さがそのまま全体の低さにつながっている。

 この2年間の経験で、企業にとってテレワークのメリットとデメリットも次第に明らかになっている。メリットは「出勤時間が不要」「自分のペースで仕事ができる」などで、家事負担の多い既婚女性にこうした声が多い。一方、デメリットは「部下の労働時間の把握が困難」という管理職や、「仕事の成果が評価されるか不安」「職場での人間関係が希薄になる」といった社員の声だ。これらの結果は、各種調査でもほぼ共通している。

 働く側はテレワークを評価する人が多く、コロナ収束後もテレワークを希望する人は「そう思う」の35.8%、「どちらかといえばそう思う」の44.6%に上り、両者を合わせると8割を超える過去最高となり、テレワーク実施率の低下と対照的な結果をみせている。企業側は、最初の感染拡大期に急ぎテレワークを実施したものの、その後の感染動向をにらみながら、テレワークに向かない職種では職場勤務を再開するなどしてきたことが実施率低下の一要因となっているようだ。

 しかし、今回のオミクロン株の猛威は、企業の対応を超える勢いで拡大している。症状こそ軽いものの、学校、病院、高齢者施設、鉄道、コンビニエンスストアなど社会の幅広い分野に感染が急速に広がり、感染者自身に加えて友人や家族なども濃厚接触者として一定の期間、隔離されることから、生活インフラの維持に黄信号がともる事態になった。これが従来の感染と大きく異なる点だ。

 企業側も自衛に走っている。自動車メーカーはトヨタなどが一部の生産ラインを縮小し、電機業界もパナソニックがテレワークを拡大、出張なども見合わせている。大手スーパーは売り場に感染者や濃厚接触者が出た場合、本社などから応援要員を派遣するなど、対応に大わらわ。集団感染が発生すれば生産ラインの縮小・停止、店舗閉鎖の事態にもつながりかねず、戦々恐々の状況だ。

 2月に入ってもオミクロン株の感染が急拡大、あるいは高止まりするような流れになれば、企業活動の萎縮や個人消費の冷え込みを招き、政府が目論んでいた1~3月期GDPプラス転換は困難となる懸念が強まっている。海外では感染がピークアウトした国もあるが、日本ではまだその兆候はみられない。

「人的資本」の把握もできていない企業

 企業レベルでみれば、この2年間でテレワークを職場にしっかり組み込んだ企業と、一時しのぎで導入した企業との"生産性格差"が拡大する可能性が高く、これがコロナ収束後も尾を引くと予想される。これまでのところ、テレワークを実施した職場の生産性が向上したかどうかについては意見が割れており、...


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