2022年の日本経済は、新型コロナウイルスの感染動向に左右される不透明な局面が続きそうだ。年明けからオミクロン株の感染が急拡大し、政府・自治体が再び規制強化に踏み切っており、昨年末まで支配的だった景気回復の楽観シナリオに暗雲が立ち込める状況となっている。(本間俊典=経済ジャーナリスト)
20年以降の景気状況は、新型コロナに翻弄された。全国に緊急事態宣言が出た20年第2四半期(4~6月)の実質GDPが前期比8.0%減と記録的な落ち込みとなったのをはじめ、21年も第1四半期(1~3月)が同0.7%減、第3四半期(7~9月)が同0.9%減とコロナ下の2年間に3回のマイナスを経験してきた=グラフ。
「3密」回避のため、飲食店などで人数制限や酒類提供が禁止された。国内外の渡航禁止や長距離の移動制限などにより、航空、鉄道、飲食、宿泊など対面型サービス業の業績が直撃を受け、GDPの過半数を占める個人消費が落ち込んだのが最大要因だった。
一方、20年後半からは欧米など海外市場の回復によって、自動車などメーカーの立ち直りが目立ち、日本経済は好不調業種が入り混じった「K字型」回復の様相を強めていた。しかし、人出が回復すると感染者も増えるという悪循環が繰り返され、個人消費の本格回復に向けた制約が多いことから、容易にコロナ前に戻る局面は訪れなかったが、21年10月ごろになって、突然、日本の感染者数は急減した。
政府は、感染の急減を受けて今年は個人消費が回復すると想定し、22年度の実質成長率を3.2%に設定して予算を組んだ。昨年央時に試算した2.2%から大きく上方修正し、21年度見通しの2.6%より高く見積もった。その柱に据えたのが個人消費の回復であり、21年度見通しの2.5%から22年度は4.0%に大幅に引き上げた。コロナ対策予備費の5兆円を含む107兆5964億円という過去最大規模の当初予算を組んで、景気を下支えする構えを整えていた。
政府と同様に、多くの民間エコノミストも今年は前半にコロナ禍からの急回復を見込んでおり、後半はその反動で伸びが鈍化するとの見通しを示している。そのカギとなるのが個人消費と企業の設備投資。とりわけ、個人消費に対する期待感は強く、この5日に開かれた経団連など経済3団体の新年祝賀会でも、多くの経営者が景気回復のカギとして「個人消費」を挙げた。
その裏付けの一つとなっているのが日銀の資金循環統計だ。21年末に発表した9月時点の個人の金融資産は1999.8兆円の過去最高となった。1年前より99兆円近く増えており、中でも現預金は38兆円増の1072兆円にのぼった。20年に支給された「特別定額給付金(1人10万円)」の12兆円余を大きく上回る増加額であり、10万円を消費せず貯蓄に回した家庭の多かったことを推定させる。この貯蓄がいよいよ「リベンジ消費」に向かうというシナリオだった。
ところが、年明けになってオミクロン株による感染急増という「第6波」が訪れ、沖縄県などにまん延防止等重点措置が適用される事態となった。感染者は全国に急拡大しており、医療体制のひっ迫を避けるためには再び強力な人流抑制に踏み切らざるを得ない状況が目前に迫っている。人流抑制となれば個人消費も再び冷え込み、今年前半にコロナ前の水準に戻るという楽観的なシナリオは崩れかねない。オミクロン株の動向が今年前半の最大の懸念材料になることは間違いなさそうだ。
もう限界?雇調金頼みの雇用維持
一方、雇用面では、政府がコロナ発生当初から雇用調整助成金(雇調金)の支給要件を大幅に緩和する一方、企業に雇用維持を強く働き掛けてきたことから、この2年間は大きな混乱は生じていない。完全失業率は20年後半こそ3%台に上昇したが、21年には2.9~2.7%の幅で推移している。有効求人倍率も20年後半の1.04倍を底に21年はジリジリ上昇を続け、年末には1.15倍まで回復した。
しかし、今後は予断を許さない。とりわけ、「失業予備軍」とされる休業者数の動向には注意が必要だ。休業者は...
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