約2年におよぶ行動制限に耐え、一定のコロナ沈静化にこぎ着けた日本。停滞した経済の反転攻勢をうかがい、ポストコロナ時代を描く2022年がスタートした。そうした機運のなか、雇用・労働関係では今年、男性の育児休業取得を促す「男性版産休」制度が導入されるほか、大企業で施行済の「パワハラ防止法」が中小企業でも適用となる。企業にとって準備と対応が必要な3つの改正法の要所や、今年の注目される労働法制のテーマと着眼点を整理する。(報道局)
昨年は、「同一労働同一賃金」の全面施行や70歳までの就業機会確保に向けた企業の努力義務、人材の流動化を促す中途採用比率の公表義務化などが施行され、コロナ禍の中で企業は準備と対応に追われた。今年も「働き方改革」を源流とする改正法の施行が相次ぐ。
「パワハラ防止法」、中小企業に拡大・4月1日施行
2020年6月に大企業に義務付けられた「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)が、4月から中小企業にも適用される。パワーハラスメントとは、職場における「優越的な関係を背景とした言動」で、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」ものにより、「労働者の就業環境が害される」もので、これら「3つの要素を全て満たす場合」と定義している。
パワハラ指針ではタイプ別に「6類型」を示し、
(1)身体的な攻撃(暴行・傷害)
(2)精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(3)人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
(4)過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
(5)過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
(6)個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
――と整理している。
これらのうち、現場で問題になりやすいのは、(2)精神的な攻撃と(6)個の侵害――と言われており、パワハラ防止の対応は、企業規模や業種業態を問わず、理解を深めて社内で共有していく対応が求められる。
「女性活躍推進法」、対象企業を101人以上に拡大・4月1日施行
2015年に成立した女性活躍推進法の改正。企業の取り組みを示す行動計画の策定・公表について、現在は従業員301人以上の企業に義務化されているが、これを101人以上の中小企業に拡大する。対象の企業は、施行日までに行動計画の策定・届け出、情報公表の準備を進める必要がある。
企業の行動計画の策定・届け出とは
・自社の女性活躍に関する状況の把握・課題分析
・企業による行動計画の策定、社内周知、外部公表
・企業の行動計画を策定した旨を都道府県労働局に届け出
――を指し、取り組みの実施と効果の測定も必須となる。
ポイントとしては、(1)採用者に占める女性比率(男性が優位になっていないか)(2)勤続年数の男女差(男女差に開きはないか)(3)管理職に占める女性比率(圧倒的に男性が占めていないか)――を分析・改善することが求められる。
「男性版産休」導入など5つの制度改正・4月1日から順次施行
育児介護休業法を改正して、男性の育休取得を促進する。今年4月から5つの改正が順次施行される。男性の育児休業取得率は、2020年で12.65%(雇用均等基本調査)まで上昇したものの、政府目標の13%には届かず、欧米を中心とする諸外国よりも低い水準にある。このような背景から、男性の育児休業取得促進のために、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設などが制度化される。
5つの改正の概要と施行期日を整理すると、
(1)企業による環境整備・個別の周知義務付け(今年4月~)
(2)有期雇用の取得要件緩和(今年4月~)
(3)男性版産休の制度導入(今年10月~)
(4)育児休業の分割取得(今年10月~)
(5)取得状況の公表義務付け(23年4月~)
(1)「企業による環境整備・個別の周知義務付け」は、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備。現行の...
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