多種多様に進化する雇用仲介サービスのあり方を議論してきた労働政策審議会労働力需給制度部会が12月8日、職業安定法上の募集情報等提供事業者(求人メディア)の対象範囲拡大や「届け出制」の導入などを盛り込んだ報告書を取りまとめ、厚生労働相に建議した。これを踏まえ、年明けの通常国会に職業安定法改正案が上程される見通しだ。厚生労働省が今年1月6日に立ち上げた有識者研究会が7月までに全17回の検討を重ねて議論の道筋を示し、そのバトンを受けた労政審が全8回にわたって法整備の方向性を詰めた。とりわけ、事業者にとって重要な動きであり、この1年の主な経過を時系列で振り返り、課題や着眼点を整理する。(報道局)
「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」の経過
【2021年1月6日】厚労省が有識者による研究会を設置。鎌田耕一・東洋大学名誉教授を座長に、有識者7人で構成。「IT化等による新しい事業モデル・サービスに対応した制度の在り方」などをテーマに、多様化する雇用仲介サービスの現状把握を進める。
【1月19日】人材サービス事業に詳しいシンクタンクとして、パーソル総合研究所とリクルートワークス研究所の2社からヒアリング。
【1月27日】厚労省の委託事業として「求人情報提供サービスの実態調査」を実施した全国求人情報協会を招き、求人メディアの現状と実態把握を進めて課題を探った。求人情報を集約化するアグリゲーターなど「新形態サービス」への関心が高く、紹介事業との"交通整理"を含め、新たなルールづくりの有無も検討課題となる。
【2月9日~3月30日】この1カ月半の間、非公開で5回の会合を開催し、人材サービス事業者を事業形態別に7社を招いてヒアリングを実施。職業紹介、求人メディア、人材データベース、アグリゲーター、SNS、スポットマッチング、クラウドソーシングなどの事業者で、求人メディアの「新形態サービス」からも聞き取った。
【4月6日】厚労省が整理した「論点案」を了承。「紹介に近いオプションを持つ求人メディアの法的位置づけ」や「求人メディアとマッチングプラットフォームの区別」などもテーマに挙がった。
【4月13日】非公開で求職者からヒアリングを実施。利用者の視点で課題を探った。
【4月20日】HRテクノロジーや、デジタル技術の進展に伴う労働市場に必要な共通言語などに詳しい有識者からヒアリング。慶大大学院の岩本隆特任教授と、三菱総合研究所政策・経済センターの山藤昌志氏が招かれる。
【5月11日】デジタル社会における個人情報保護法に詳しい有識者と、人材サービス関連の業界団体からヒアリングを実施。中大国際情報学部の小向太郎教授と、人材サービス産業協議会が招かれる。
【5月25日】報告書策定を視野に具体的な論点について本格議論を開始。「議論の整理案」に沿って検討を進め、「新形態サービス」などに対する一定の法的整理や、職業紹介に近いオプションを持つ募集情報提供に対する法的位置づけの必要性などで一致。
【6月1日】個別の論点を整理するとともに、明治学院大の河野奈月准教授を招いて「採用の局面における労働者の個人情報の取り扱いをめぐる米仏の規制」を調査。
【6月8日】「職業情報・募集情報等の共通フォーマットの整備」「公共の役割」「求職者等の特徴・保護」「人材サービスの役割」「業界団体の役割」の5項目について議論を深めた。
【6月22日】報告書策定の前段となる骨子案を「労働市場の整備」「雇用仲介サービスが取り扱う情報」「人材サービスの役割」の3つの柱で構成。「新形態サービス」の把握や紹介事業との境界線が課題で、双方が対等の立場で競争できる同一の条件整備(イコールフッティング)のあり方が焦点のひとつになる。
【7月13日】半年間にわたる議論を踏まえて報告書を取りまとめる。この中で、求人メディアの「新形態」と多種多様な「雇用仲介サービス」の法的位置づけの明確化や、労働市場の実態把握と効果的な雇用対策に向けた公的機関と民間人材サービスの連携強化などを提言した。
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