パートタイム、アルバイト、派遣など非正規雇用の時給が上昇している=グラフ。新型コロナウイルスの収束をにらみ、IT業界の人材需要が加速しているのに加え、飲食業界などが「コロナ後」を見据えて人手確保に乗り出したことが主要因だ。しかし、パート・アルバイト、派遣では回復状況にかなりの違いがみられ、政府の雇用対策もキメ細かい対応が求められる。(報道局)
派遣の場合、コロナで飲食、宿泊などの対面型サービス職種の人材需要は落ち込んだ一方で、テレワークの浸透やDX技術の必要に迫られた企業のIT人材需要がけん引する形で、時給は早めに回復した。
エン・ジャパンの月例調査をみると、派遣の時給は景気後退に伴って19年末ごろから下落傾向をたどっていたが、年明けのコロナ禍で企業活動が"一時停止"したため下落に拍車が掛かり、20年8~10月には前年を下回る水準まで下がった。
しかし、海外需要の復活で国内メーカーも復調してきたため、同年秋以降の時給は月ごとのアップダウンはあるものの上昇傾向に転じ、今年7月には1624円、9月にも1623円の過去最高に達している。同社は「多くの企業がシステムの内製化・変更に伴う運用・保守やネットワークエンジニアの経験者を求めるようになったため」と分析しており、コロナでひっ迫している医療・介護系の経験者需要が増えたことも要因の一つとしている。
派遣の復調は日本人材派遣協会の調査にも表れており、同協会が会員派遣会社を対象に実施している実稼働者数調査によると、今年7~9月の平均稼働者数は約36.9万人となり、コロナ前の2年1~3月期の37.1万人に近づいており、9月単月では37万人台まで回復している。
派遣の主力である事務職は、企業が導入したテレワークでも就業を続けられる職種が多く、大きな人員削減の対象にならなかった。また、政府は派遣業界などに対して雇用調整助成金の活用などを通じた雇用維持を再三にわたって要請し、業界も09年当時に社会問題となった派遣の大量解雇を教訓に雇用維持に努めたのが奏功した。日本企業は短期的な即戦力人材を派遣会社に求める傾向が強く、それも時給の押し上げ要因となっている。
これに対して、パート・アルバイトも時給については派遣とほぼ同じ傾向がみられる。ディップの月例調査では、20年5月以降は前年を下回る水準が続いていたが、21年に入ると上昇基調に転換。とりわけ6月以降の回復が顕著で、10月には1195円とコロナ前を大きく上回る最高水準になった。10月からの最低賃金の大幅アップと、コロナ収束を見込んだ飲食業界などの需要回復が主要因とみられる。
営業規制でパート・アルバイトの回復鈍く
ただ、時給の伸びの割に就労者数はコロナ前ほど回復していない。
総務省の労働力調査によると、コロナ前の20年3月の非正規従業員は約2150万人で、内訳はパートが1055万人、アルバイトが461万人、派遣が144万人など。これが今年10月には総数が約2071万人で、パート1021万人、アルバイト431万人、派遣144万人となっている。コロナ前より80万人程度減少しており、それもパートの34万人減、アルバイトの30万人減と大幅減が続いている一方、派遣は増減がなかった。今回の雇用減が非正規の中でもパートとアルバイトに集中していることが鮮明になっている。
実際、企業側の求人もまだ十分回復しているとは言えない。バイトルに掲載された...
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