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2021年11月 8日

ランスタッド・ジャパンのポール・デュプイ会長兼CEOに聞く(上)

変わるオフィスの役割、「働き方はハイブリッド型へ」

 オランダに本社を置く世界最大の総合人材サービス企業、ランスタッド・エヌ・ヴィー。今年7月、日本法人の会長兼CEOにカナダ出身のポール・デュプイ氏が就任した。日本をはじめ、シンガポールや香港、インドなどアジア地域で25年以上にわたり、ビジネスの成長や発展に指導的な役割を果たしてきた。「リーダーシップ論」に一家言あり、著書も発刊しているデュプイ氏に、グローバルな視点から日本企業の特徴や課題、アフターコロナにおける働き方について聞いた。(聞き手=大野博司、撮影=山内信也)  ※(下)は11月10日(水)に掲載します。

――就任前はランスタッド・インドのCEOとして手腕を振るってきた。日本との仕事観の違いや特性は。

sc211108.jpgデュプイ インド人は日本人と日系企業をリスペクトしています。ビジネスだけでなく文化面でも。「約束を守る」「冷静に判断する」「人の話を聞いて考え、行動する」。日本では当たり前の姿かも知れませんが、アジア各国からすると優れた特徴です。それが製品やサービスのクオリティにつながっています。

 人口は約10倍の差があり、「増えながら若くなるインド」と「縮みながら高齢化する日本」では、当然ながら仕事観に違いがあります。インドのビジネスパーソンは感情の起伏が激しく、スタンドプレーも目立ちます。そうした中で、日本人の仕事に対する姿勢や考え方は先輩として尊敬され、タイやベトナム、カンボジアなどでも日本スタイルに習おうという意識が感じられます。

 また、日系企業は働く時間が長いというイメージがありますが、海外ではそうした受け止め方はありません。福利厚生が充実し、悩み事も温かくケアしてくれるところが多く、アジア各国では新卒で日系企業に入社すると、その後も日系企業に転職していく傾向がみられます。

――新型コロナウイルスが世界を席巻して約2年。ようやく沈静化してきたが、これからの働き方に変化は。

デュプイ 準備と対策を講じたうえで、ウィズ・コロナのスタンスでビジネスを再開させることに賛成です。ただ、コロナ禍は働き方に大きな変化をもたらしたので、以前と同じ毎日出社、毎朝朝礼といった「仕事のカタチ」は戻りません。これからは在宅型と出社型を混合させた「ハイブリッド型」に変わる必要があります。

 ハイブリッドな働き方について興味深いアンケート結果があります。世界38の国と地域にあるランスタッドの社員に聞いたところ、平均で15%がこれからもオフィスで仕事はしたくないと。理由はコロナが怖いとか、家の方が集中できるなどさまざまです。そして、最も多い65%がハイブリッド型で働くことを支持しています。また、1週間のうちオフィスで仕事をしたい日数は世界平均で2.2日。日本は2.8日と高めですが、このニーズに応えていかなければなりません。

 従来までと「オフィスの役割」が変わるので、レイアウトやデザインも変えることが求められます。ランスタッドはグローバルでこの動きを進めており、Future-ready(未来の働き方)を創造しています。世界で取り組むこのプロジェクトを私がリードしており、「コラボレーション(共に働く)」「インスピレーション(ひらめき)」「セレブレーション(祝う)」を3大コンセプトにレイアウトしています。

日本の人材紹介に確かなニーズ

――2013年にランスタッド・ジャパンのメンバーになり、特にサーチ型の人材紹介事業の確立に手腕を発揮した。日本の人材紹介の市場に活路は。

デュプイ 日本の人材紹介の市場は世界2位です。正社員や契約社員、派遣社員の中で、正社員は働き方のひとつであり、最近では業務委託契約に近いギグワークもあります。正社員はアメリカなどでは減ってきていますが、日本ではまだまだニーズがあり、市場は活気にあふれています。少子高齢化やコロナの影響を受けながらも発展拡大が期待される事業分野で、競合他社もそのような見方と動きをしています。

 ただ、大きな壁はキャンディデート(候補者)の先細りです。クライアント企業の条件に合った紹介の対象となる候補者は、労働人口の減少とともに小さくなっています。人材育成とともにテクノロジーでカバーする流れが加速しますが、看護士や介護などロボットが活用できない分野は、海外から人材を迎え入れていかないと立ち行かない。既存の分野や職種に加えて、紹介はこうした方向にもかかわっていくことになります。


(つづく)


Paul Dupuis(ポール・デュプイ)1968年、カナダ・オンタリオ州生まれ。日本、シンガポール、香港、韓国、インドを含むアジア地域で25年以上にわたり、ビジネスの成長と発展や戦略的プランニング、イノベーションなどの分野で指導的役割を果たす。2013年にランスタッド・ジャパンに入社し、プロフェッショナル事業部のマネージングディレクターを務め、14年に取締役に就任。17年にランスタッド・インドのCOOとして着任後、CEOに昇進。21年7月から現職。リーダーシップ論を説いた『THE E5 MOVEMENT』を出版した。


ランスタッド・エヌ・ヴィー 1960年設立、オランダに本社を置く総合人材サービス企業。欧州各国をはじめ、世界38の国と地域に拠点を持つ。従業員数3万4680人(2020年12月末)、資本金5927億円(同)、売上高2兆6300億円(2020年度実績)で世界1位。ランスタッド・ジャパンはグループ内で米国とともに投資対象に挙げられている重要拠点。

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