ITやAIなどの進展とともに多様化する労働市場の「雇用仲介サービス」。その役割が拡大する中で、新たに参入するプレーヤーの実態把握や透明性の向上など、求職者の安心感を高めるための「ルールづくり」が急務となっている。この課題を巡っては、労働政策審議会が8月30日に「雇用仲介のあり方」に関する議論をスタートさせ、公労使委員が労働市場の発展と整備に向けた議論を本格化させた。来年の職業安定法改正につながる動きで、募集情報提供事業者(求人メディア)のみならず、派遣・紹介などを含む人材サービス業界全体に「新たな枠組みと変化」をもたらす公算が高い。「規制は薄く広く」をキーワードに展開するとみられる労政審の今後の議論と方向性を探る。(報道局)
「たたき台」となる研究会報告書の3つの視点
「雇用仲介のあり方」に関する労政審の議論は、職業安定局労働力需給制度部会(山川隆一部会長)で始まっている。8月30日の会合=写真=を皮切りに、12月までに報告書を取りまとめて「建議」する見通しだ。
雇用の"仲介的サービス"を取り巻く課題は、労政審のテーブルにのせる前に、有識者による研究会が整理している。同部会はこれを「たたき台」として掘り下げ、具体的な方針やルールづくりを提言する模様だ。それゆえ、今後の議論を見極めるうえで重要となる研究会報告書について、要所と視点を押さえておきたい。
「現状と課題」について、「従来の雇用仲介に関する政策は職業紹介を中心としていたが、求人メディアなど多様な形態のサービスが提供。最近はIT技術の進展により、これまで想定してきたモデルでは捉えきれない雇用仲介の実態が生じている」と提起。加えて、「労働市場において官民が連携し、需給調整機能を迅速に発揮させる必要性があり、雇用仲介サービスの役割は益々大きなものとなる」としている。
課題解決に向けた「基本的な考え方」として、
(1)行政は労働市場の機能を高め、実効性のある雇用対策を講じることが重要であり、求人メディアとも連携
(2)求人メディアや新たな雇用仲介サービスが労働市場において果たす役割を積極的に評価し、労働市場において需給調整(マッチング)機能の一翼を担うものとして位置付ける
(3)そのうえで、雇用仲介サービスを手掛ける事業者が依拠すべきルールを明確にする
――と記した。
これを踏まえて、「労働市場の整備」「雇用仲介サービスの取り扱う情報」「雇用仲介サービスの役割」の3つの視点で整理。この中で、「求人メディアや新たな雇用仲介サービスを提供している事業者の把握」「募集情報は的確な表示、かつ正確で最新を維持」「苦情を受け付ける体制の整備」を指摘している。同部会ではこうした視点を具体的に法律に落とし込む場合の方策や手法、規制をかける場合には「範囲とレベル」が焦点となる模様だ。
今後のサービスの進展も視野に厚生労働省は...
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