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2021年8月30日

◆経済トピックス◆景気の本格回復、年内は望み薄

減らぬ人流、ワクチン頼みも限界

 新型コロナウイルスの感染拡大はデルタ株の猛威によって止まらない。政府が描いていた「年内の景気回復」のシナリオは崩れつつあり、政局にまで影響を及ぼしそうだ。今のところ、ワクチン接種のスピードを感染スピードが上回る勢いが続いている。医療体制の整備が進まない限り人流の抑制は不可避であり、それが景気回復の重い足かせとなっている。(本間俊典=経済ジャーナリスト)

 内閣府によると、今年4~6月期の実質GDPは前期比0.3%増(年率換算1.3%増)の微増となった。「巣ごもり消費」や企業の設備投資が伸びたため、東京都などに緊急事態宣言の出ていた1~3月期の同0.9%減(同3.7%減)からプラス転換はしたものの、その勢いはまだ弱く、本格回復の見通しは7~9月期の状況をみてからというのが専門家らの意見だった。

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百貨店にも再び規制の網=東京・銀座

 ところが、7~9月期は年率5%前後の伸びを予測するシンクタンクが多かったものの、8月になってデルタ株による感染の「第5波」が猛威を振るい、政府は7月から東京都など6都府県に緊急事態宣言を出した。その後も感染の勢いは止まらず、8月20日に京都府など7府県を追加し、13都府県とも期間を9月12日まで延長する措置を取った。同時に、北海道など16道県にはまん延防止等重点措置の対象とした。

 一方、2月から本格開始したワクチン接種は順調に進んでいるものの、8月末時点で2回接種を終えた人の割合は、先行接種した65歳以上の高齢者こそ87%に上っているが、全人口比率ではまだ40%台前半と半数にも満たない。デルタ株は未接種の若年層、中年層を中心に広がっており、ワクチンの"後追い"状態が明らかになっている。

 国民全体が緊急事態宣言に対して慣れてしまい、宣言の効果がほとんどなくなっていることも感染拡大の大きな要因。都市部の人流は1年前に比べると、明らかにそれほどの減少はみられない。政府はこれまで、昨春の宣言当時に顕著にみられた「人流抑制=経済ダウン」を避けたいとして、経済活動に必要な人流はできるだけ抑制せず、ワクチンの普及を通じて感染抑制と経済回復のバランスに腐心してきたが、目論見ははずれてしまった。

 このため、第5波ではワクチン頼みの政策を転換し、人流抑制にも注力。百貨店の地下売り場の来店客を抑制するよう求めたり、菅首相自ら経団連など経済3団体にテレワーク実施を通じた「人流の7割減」に向けて協力要請した。しかし、人流減少の動きは鈍く、感染拡大のペースが上回っているのが実態だ。

 現在の景気は、海外需要の回復などによって好調なメーカーが多い一方で、国内向け対面型サービス産業は依然として厳しい「K字型」回復が続いている。サービス産業はGDPの6割近くを占める個人消費の回復を担う中核産業だが、少なくとも感染の急増中は事業活動も大きな制約を受ける。当面はメーカー頼みの"片肺飛行"が続くが、...


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