9月中旬以降、労働政策審議会や各種検討会・研究会が活発に動き出す。雇用・労働を巡って新たな法改正の方向や来春施行の改正法に関する政省令の策定が進められ、年末にかけて労使が熱い議論を展開する。新型コロナの第5波が国内全体に拡大する中、ウィズ/アフター・コロナ時代の労働政策や求人メディアの「新形態」を含む人材事業者のルールづくりなどが焦点となる模様だ。この秋から注目される労政審の分科会・部会の検討テーマや着眼点について整理する。(報道局)
労政審の上部組織となる本審は、9月開催で調整中だ。年度始めと折り返し時期の年2回開催が慣例となっており、今春は5月に開催。新会長に清家篤氏(慶応義塾学事顧問)を選んで、第11期となる労政審の体制をスタートさせた。今秋には、厚生労働省から2022年度予算の概算要求と主要施策の説明を受けて質疑を交わすほか、各局所管の労政審分科会・部会の審議状況を確認する。
21年度は、新型コロナウイルス感染症から「国民のいのちや生活を守る」「ウィズ・コロナ時代に対応した社会保障」をキーワードに、「保健・医療・介護の構築」「雇用就業機会の確保」「『新たな日常』の下での生活支援」を掲げて施策を展開してきたが、来年度は収束が見えない新型コロナとの共存を意識した各種施策を打ち出してくるとみられる。
今秋以降、動向が注目されるのは、キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「賃金デジタル払い」のあり方について議論している労政審労働条件分科会や、求人メディアの「新形態」と多種多様な「雇用仲介サービス」の法的位置づけの明確化など職業安定法改正に向けた議論を展開する労政審労働力需給制度部会。このほか、労働契約法「無期転換ルール」の見直しと「多様な正社員」の雇用ルールを議論する有識者会議「多様化する労働契約のルールに関する検討会」など、企業と労働者、そして人材サービス事業者のいずれにも影響が大きい動きが目白押しだ。労政審や検討会・研究会ごとに4つの会議体を整理すると、
労政審・労働条件分科会
政府が実現を急ぐ「賃金デジタル払い」だが、このテーマは膠着状態に陥っている。「賃金デジタル払い」は、企業が労働者の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込むことを可能にする仕組み。実現するためには、「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労働基準法第24条の省令改正が必要で、現在、例外で認めている「銀行」に「資金移動業者」を加えなければならない。
同分科会での議論は、1月28日に実質スタートし、これまでに4回審議。政府は昨年7月の閣議決定で「20年度内の早期に制度化をはかる」としていたが、同分科会の議論は難航している。
社会全体のデジタル化を推進する政府は、9月1日の「デジタル庁創設」を念頭に「変化の象徴」のひとつとして実現したい意向。厚労省は4月...
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