多種多様に進化する採用プロセスの現状を把握し、職業紹介と募集情報提供(求人メディア)の役割や課題を検証してきた、厚生労働省の有識者会議「労働市場における雇用仲介の在り方に関する研究会」が7月、報告書をまとめた=写真。今秋から始まる労働政策審議会で、報告書を「たたき台」に職業安定法改正に向けた労使の議論がスタートする。職業安定法に位置付けられている職業紹介と求人メディアのほかに、「伝統的なイメージを超える多様な雇用仲介サービスの実態把握」(報告書抜粋)が重要となり、とりわけ、求人メディアの「新形態サービス」に関する位置づけと整理、ルールづくりが労政審の焦点となりそうだ。報告書を検証し、今後の展開を探る。(報道局)
今年1月から全17回にわたり精力的に会合を重ねてきた同研究会。5年前の職安法改正につながる有識者会議は、1年4カ月で計16回だったことを考えると、かなり濃密に進めてきた様子がうかがえる。報告書は、利用者の安心とイノベーションを両立させる観点から(1)労働市場の整備として①雇用仲介サービスの法的位置づけ、②公共の役割、③新しいサービスの把握、④職業情報・募集情報等の共通フォーマットの整備。(2)雇用仲介サービスを取り扱う情報として①情報の的確性、②個人情報等の保護。(3)雇用仲介サービスの役割・仕事を探す者の保護等として①雇用仲介サービスの役割、②仕事を探す者の保護、③業界団体の役割、④雇用以外の仲介――に整理した。
最大のポイントは「急速に進化・多様化する雇用仲介サービスの実態把握とルールの必要性」と「新型コロナに直面して労働市場における官民の持つ情報共有や連携の重要性」が明記されたことだ。
このほか、「新形態サービス」と許可事業である職業紹介の境界線について、双方が対等の立場で競争できる同一の条件整備(イコールフッティング)のあり方も注目されていた。もう少し踏み込むと、労働市場には現在、さまざまなプレーヤーが存在し、情報技術の発展で職業仲介サービスが多様化。「全く別な分野から求人メディアに新規参入しているパターンが目立ち、現在の法律やルールで十分に対処できているのか」(同研究会委員)との課題もあった。
また、同研究会のテーブル外の動きだが、既存の大手求人メディアが新興勢力である「新形態サービス」に出資しているケースも散見されるだけに、良し悪しではなく、人材サービス業界内における各団体(紹介事業団体と求人メディア団体)の立ち位置や思惑も絡んで議論の行方が注目されていた。
「法規制とルールは薄く広く」、そのレベル感は?
同研究会の最終回となった7月13日の会合では、全8ページの報告書案を事務局の厚労省が説明。委員から内容に異論はなく、文言修正もなく、報告書として了承された。これからの職安法、雇用仲介サービスの課題と方向性を丁寧に盛り込めたこともあって、委員の総括的意見は評価と満足度が高かった。今秋にも始まる労政審は...
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