今年の春闘は終わり、連合が5日に発表した最終集計によると平均賃上げ額(定期昇給込み)は5180円、賃上げ率は1.78%。昨年の5506円、1.90%をどちらも下回り、2年連続で2%を割り込む低調な結果となった。最大の要因はコロナ禍とされるものの、製造業を中心に業績が回復している企業も多く、春闘の果たす役割が年々低下しているのは確かなようだ。(報道局)
2013年以降の推移をみると、14~16年の3年と18~19年の2年は2%台の伸びを維持してきたが、13年は1.71%、17年は1.98%と2%台を割っている。20、21年はコロナ禍もあってと再び2%割れとなったうえ、21年は金額、伸び率とも13年に次ぐ低水準に終わった=グラフ。
これは企業規模でも大きな違いはなく、従業員300人以上の企業は5321円、1.79%で、同300人未満の企業も4288円、1.73%だった。昨年の各5663円、1.91%、4464円、1.81%をいずれも下回っている。月例賃金だけでなく、年間ボーナスも平均4.62カ月の152万124円で妥結。昨年の4.79カ月、153万3681円を下回った。
近年の春闘は、16年ごろから賃金アップを通じた景気浮揚を狙う政府が労使交渉の前に"目標"を設定する「官製春闘」が続き、2%アップを実現する年が多かった。しかし、19年後半から景気が下降局面に向かっていたところへ、20年に入って新型コロナウイルスの感染拡大が本格化したため、企業側の賃上げ意識は急速に冷え込み、焦点は「雇用の維持」に移った感がある。
今春まで延べ3回に及んだ緊急事態宣言をはじめ、政府は感染拡大を防ぐため1年半近くにわたる人流抑制や営業規制を強化した結果、宿泊や飲食サービス業界、航空・鉄道などの運輸業界といった対面型サービス企業は大々的な業績悪化に見舞われている。
海外需要の持ち直しなどで製造業は業績を回復しているものの、不況業種との差は開く一方で、景気は「K字型回復」の様相を強めている。不況業種を中心に、現在も完全失業者は200万人前後、「失業予備軍」と言われる休業者も200万人前後いて、不安定な立場に置かれている。政府の雇用調整助成金などの活用を通じて、多くの企業が辛うじて雇用を死守しているものの、女性を中心にした非正規労働者の雇用はかなり悪化しているのが実情だ。もともと、こうした層は春闘の対象になりにくく、今回も「She-cession(女性不況)」が主要な交渉テーマになった形跡はない。
気が付けば、「オンライン労組」が出現
しかし、コロナ以前から日本企業の賃金水準が先進国では低いことは、労使とも共通の認識として持ち合わせていた。その主要因が、正社員の長時間労働と非正規社員の低賃金に根差す労働生産性の低さにあることも、ほぼ認識されている。
昨年4~5月の緊急事態宣言では多くの企業が社員のテレワークを余儀なくされたが、残業を認めない企業が多数だったことから、厚労省の毎月勤労統計では残業代が25%前後ダウンし、6月以降も二ケタ減が続いた。20年度を平均すると正社員が中心の一般労働者は月平均12.2時間の残業で約2万3500円が支払われた。どちらも14%近い大幅減少だったから、残業代が生活費の一部となっていることがコロナで改めて浮き彫りになった。残業に頼る限り、生産性の向上はむずかしい。
さらに、...
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