新型コロナウイルスの感染収束が見通せない中でも、日本の国内景気は着実に回復している。製造業の立ち直りが急ピッチで進んでいるのが最大要因だが、今後はワクチン接種と変異ウイルスの"せめぎ合い"の様相を強めており、先行きについてはまだ慎重な企業が多い。(本間俊典=経済ジャーナリスト)
日銀が7月1日に発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、景気が「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した割合を引いた業況判断DIは、全産業でマイナス3となり、3月の前回比で5ポイント増となった。
このうち、製造業はプラス2(同8ポイント増)、非製造業はマイナス7(同2ポイント増)となり、製造業は19年6月以来、2年ぶりにプラス転換した。海外需要の持ち直しや円安基調によって、昨年6月のマイナス39を底に徐々に回復基調をたどっていた。一方、非製造業は昨年6月のマイナス25以来、1年後の今回もまだマイナスから脱却できていない=グラフ。
しかし、景気のけん引役となっている大企業に限ると、製造業はプラス14(同9ポイント増)、非製造業はプラス1(同2ポイント増)となり、非製造業もようやくプラス転換した。もっとも、非製造業も企業規模別では中堅企業がマイナス8、中小企業がマイナス9であり、依然としてマイナスが続いている。
短観からわかることは、景気回復の波は製造業の大企業から始まっており、非製造業も大企業から回復に向かっているものの、回復ペースは製造業に比べてかなり鈍いことだ。非製造業では主要12業種のうち、情報サービスや不動産など8業種はプラスとなったが、運輸・郵便、電気・ガスなど4業種はマイナスのままで、中でも宿泊・飲食サービスはマイナス74というドン底状態が続いている。
言うまでもなく、緊急事態宣言やまん延防止等措置などによって、対面型サービスの業種で事業活動が厳しく制限されているためで、マイナス幅は中堅、中小の場合もほぼ同じだ。9月予想では大企業でマイナス47まで大幅改善するとみているものの、これはワクチン接種が全世代に拡大して感染者数が減少し、営業規制などが緩められるという「希望的観測」に基づくものだ。
しかし、自治体へのワクチン配布が遅れて混乱が生じるなど、接種のペースが鈍化しているうえ、今月23日に開幕する東京オリンピック・パラリンピックで国内外の人流が急増することが予想されるため、再び感染拡大につながるのではないかとの懸念も強いことから、先行き見通しは慎重な企業が多い。
短観の動きは雇用面にも反映されている。政府統計の有効求人倍率は昨年前半の1.5倍台から後半に急低下し、9~10月には1.04倍まで下がったが、年明けから回復傾向を見せ、今年前半は1.09~1.10倍で推移している。
完全失業率も19年後半までは人手不足を背景に2.2%という超低水準だったが、20年にコロナ禍が本格化すると急上昇し、後半には3%台を記録。今年になってやや低下傾向を見せているものの、依然として3%に近い水準で推移している。失業者も200万人を上下する水準だ。
ただ、リーマン・ショック当時は求人倍率が0.4倍台前半まで落ち込み、10年ごろには失業率も5%を超え、失業者は350万人前後に達した。当時と比べれば、...
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