インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い、個人で働く「ギグ・エコノミー」の拡大に対応するため、政府は3月、「フリーランス保護のガイドライン」を策定した。フリーランスとして安心して働ける環境整備を狙っているが、現行法令下における「留意事項一覧」の域を超えず、労使双方が期待する「雇用類似」の境界線や「労働者性」の新たな判断基準は示されていない。世界に目を転じると、5月に入り、アメリカのバイデン政権が「ギグワーカー」の権利保護強化に向けた前政権と異なる政策転換を打ち出すなど、世界各国で「雇用と自営の中間的な働き方」を巡る対応に苦慮している。こうした流れに押され、日本国内でもあらためて「雇用類似」と「労働者性」の整理、更にはそれらの募集情報提供の仕組みといった各種周辺サービスのあり方など、議論のテーマは多岐に広がる様相を呈している。(報道局)
フリーランスやギグワーカーなどの課題を探るうえで重要なのは、その言葉が指す範囲を含む「定義」だ。海外と日本では微妙に異なる場合があるので、法律やルールを規制または緩和する議論において、海外事情を参考にする際は注意が必要となる。
今回策定した「フリーランス保護のガイドライン」は、大きく5項目で構成。その第1にフリーランスの定義を置き、「実店舗がなく、雇人(やといにん・使用者)もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と明記。また、「原則として雇用という働き方ではなく、労働基準法などの労働関係法令が適用されない場合があることに留意が必要」と補足した。
一方、「雇用類似」は「雇用」と「自営」の中間的な働き方で、見かけは自営業者。個人事業主やフリーランサー、クラウドワーカー、ギグワーカーなどが含まれる。冒頭の米国の動きで触れた「ギグワーカー」とは、「インターネット上のプラットフォームサービスを介して単発の仕事(ギグワーク)を請け負う労働者」のことで、似た言葉の「ギグ・エコノミー」について政府は「そうした就業形態を指す呼び名」としている。
今回のガイドラインの特徴のひとつは、内閣官房と公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で策定したことだ。独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法、各種労働関係法令の適用関係を省庁バラバラではなく、具体的に問題となる行為を盛り込んで「一覧」にまとめた。ここから、ガイドラインの要所と厚生労働省から概要説明を受けた労働政策審議会労働条件分科会=写真=での質疑、米国の動向と国内への影響について掘り下げたい。
ガイドラインは「第1・定義」、「第2・独禁法、下請法、労働関係法令との適用関係」、独禁法と下請法として「第3・フリーランスと取り引きを行う事業者が順守すべき事項」と「第4・仲介事業者が順守すべき事項」、労働関係法として「第5・現行法上『雇用』に該当する場合の判断基準」で構成され...
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