1都3県に出ていた2回目の緊急事態宣言が21日に解除された。今回は1月8日に発出されてから、2度の延長を経て2カ月半に及ぶ長期間となった。そのため、国民の間に"自粛疲れ"が広がり、解除前から人の動きが増えていた。その結果、新型コロナウイルスの感染者もまた増え始め、医療界などから「第4波」の到来を予測する声も出ている。宣言の解除後も、今のところ、消費活動を中心にした景気回復の道筋が見えてこない。(本間俊典=経済ジャーナリスト)
実際、消費活動は低迷が続いている。総務省が毎月公表している家計調査報告によると、2人以上世帯の実質消費の前年比は19年後半からマイナスになっていたが、20年に入って感染が広がるとマイナス幅は一気に拡大し、第1回目の宣言下の4月は11.1%減、5月は16.2%減と大きく下がった。
その後も消費の戻りは鈍く、政府の「Go Toキャンペーン」が本格化した10月が1.9%、11月が1.1%とようやくプラス転換したものの、第3波の12月には再びマイナスに。今年1月には6.1%減(1世帯あたり消費支出額は約26万8000円)とマイナス幅を広げている。
コロナで消費行動が大きく変わった品目として、1月の場合、パスタや冷凍調理食品、酎ハイ・カクテルといった食品が2~3割伸びている半面、食事代は4割減、飲酒代は9割減。加湿器や空気清浄機などの冷暖房器具は9割増だった一方で、背広は4割減。最も目立つのは交通・通信費が4~9割減、パック旅行費などの教養娯楽費も6~9割減と激減している点だ。"巣ごもり"消費の実態を鮮明に映し出しているが、消費全体でみればマイナスとなっている。
これに対して、2人世帯のうちの勤労者世帯の実収入は、昨年は1%台の"低空飛行"ながら毎月プラスを続け、国民1人に10万円の「特別定額給付金」を支給した5~7月は二ケタ増にハネ上がった。しかし、その後は再び低空飛行に戻り、12月になって1.3%減のマイナスに転じた。今年1月も2.5%減(2人以上勤労世帯で約47万円)と2カ月連続のマイナスとなっている。それにしても、収入と支出の差はどこに行ったのだろうか。
日銀が公表している資金循環統計をみると、事情がある程度わかってくる。20年末の家計の金融資産は1948兆円(前年比2.9%増)の過去最高を記録。その過半数を占める「現金・預金」は1056兆円(同4.8%増)と大きく伸びた。株価上昇による売却益などに加え、定額給付金が使われずに"タンス預金"となっている可能性が高い。
一方、企業の持つ金融資産も20年末で1275兆円(同6.2%増)に増えている。これは、企業が設備投資を控えているのが大きな要因で、財務省の法人企業統計調査でも、昨年4~6月、7~9月期の設備投資は二ケタ減と大きく落ち込み、10~12月期に5%減まで戻したが、まだ前年水準には届いていない。家庭だけでなく、企業もコロナの先行き不透明に対して、思い切った設備投資ができないのが実態だ。
コロナ禍によって日本経済は昨年4~6月期に前期比マイナス8.3%と大きく落ち込み、その反動で7~9月期は5.3%、10~12月期も2.8%と2四半期連続のプラスを維持してきた。しかし、第2次緊急事態宣言が長引いたこともあり、この1~3月期は再びマイナスになるのが確実視されている。
ワクチンの早期普及が最大のカギ
また、3月中旬から首都圏の感染者数が下げ止まっているうえ、地方でも感染者が急増している都市部が出ていることから、...
※こちらの記事の全文は、有料会員限定の配信とさせていただいております。有料会員への入会をご検討の方は、右上の「会員限定メールサービス(triangle)」のバナーをクリックしていただき、まずはサンプルをご請求ください。「triangle」は法人向けのサービスです。