2021年春闘は連合が5日に中央総決起集会を開いて気勢を上げ、3月中旬の一斉回答日に向けて労使の攻防が本格化する。昨年は攻防戦のさなかに新型コロナウイルスの感染が急拡大し、4月の第1次緊急事態宣言を前に大半の企業活動がストップした。今年は第2次宣言の中での攻防となっているが、労使とも大筋では昨年と同じスタンスで臨んでおり、双方「守りの春闘」になりそうだ。(報道局)
今年の春闘で労使が掲げている目標について、経団連は(1)賃上げの必要性は認めるが、横並び・一律の賃上げは困難(2)コロナ禍における企業の存続、雇用の維持に向けた協議(3)テレワークの拡大、ジョブ型雇用など柔軟な働き方の推進、などを掲げた。
これに対して、連合は(1)生活の底上げに向け、2%程度のベースアップと定期昇給分を合わせた4%程度の賃上げ(2)非正規雇用を中心とした生活保障、スキルアップ、就労支援をパッケージにしたセーフティーネットの構築(3)「コロナ後」を見据えた待遇の本格的底上げ、などを目標にしている。
労使ともに、日本の労働賃金の水準が先進国で最下位クラスであることは認めており、「賃上げは必要」という認識では一致している。しかし、生産性の向上が進んでいないうえ、コロナ禍が収束していないことから、経営者側は「一律の賃上げは無理」、労働者側は「底上げのための賃上げで経済の好循環を」と主張。両者に大きな開きがみられる。
エッセンシャルワーカーを多く抱える連合最大の
産業別労働組合・UAゼンセン。21年春闘に向けた
執行部による記者説明会(1月20日、東京都内)
労使ともにこの1年、コロナ禍に振り回されてきた経営状況、生活状況を色濃く反映した主張になっているが、コロナによって苦境に立たされている運輸、宿泊、サービス業などに対して、中国市場の回復や"巣ごもり需要"で息を吹き返した自動車、家電、ゲーム業などとの業績の二極化が鮮明となっており、「脱・一律賃上げ」ムードが高まっているのは確かだ。
相場を引っ張る自動車業界の場合、最大手のトヨタ自動車労組はベアと定昇などを合わせて9200円の賃上げを要求するとみられるが、ホンダ、マツダ、三菱自動車の労組はベア要求を見送る方針で検討している。流通・外食企業などが加盟する最大労組のUAゼンセンの場合、「2%までの幅」を賃上げ目標としつつ、最終的には個別対応に任せる方針。旅客需要が激減している航空業界の航空連合は、統一目標は出さない方針だ。「一律賃上げ」はもはや過去のものになりつつある。
賃上げから一転、雇用維持に
今年は、雇用情勢の悪化を背景に、賃上げ以上に雇用の維持が最大焦点になる可能性が高い。総務省の昨年の年間完全失業者は191万人(前年比29万人増)、失業率は2.8%(同0.4ポイント増)と11年ぶりに上昇。直近の昨年12月の場合、失業者は194万人(前年同月比49万人増)、失業率は2.9%に悪化している。
さらに、...
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