スペシャルコンテンツ記事一覧へ

2020年12月 7日

「検討会」で足踏み5年、「解雇無効時の金銭救済」を巡る議論

紛争解決の新たな選択肢になり得るか

 解雇無効時の金銭救済制度の創設――。「必要・容認論」と「不要・否定論」が真っ向からぶつかる日本の労働政策、法制上の課題だ。雇用の柔軟化・流動化を促す方策として肯定的に捉えられる一方で、「カネでクビ切り」との批判も強く、賛否が割れる。第2次安倍政権発足直後の2013年から議論を活発化させ、新制度として法制化を目指してきた政府だが、労働政策審議会の俎(そ)上に載せることができないまま現在に至る。「解雇の金銭解決」を巡る政府と厚生労働省の議論の経過を整理し、今後の展開を探る。(報道局)

 この課題は、日本の紛争解決システムが不透明との指摘があることから、2003年以降、政府の会議体などで断続的に議論されてきた。月日ばかりが経過して結論に至らない中、政府の規制改革会議(当時)が2015年3月、「労使双方が納得する雇用終了の在り方」と題する意見書を提出し、法制化に向けてこう着する議論を揺り動かした。同じタイミングで政府は、「日本再興戦略改訂2015」の中に、「透明・公正でグローバルにも通用する解決システムの構築に向けて議論する」ことを盛り込み、閣議決定した。

sc201207.jpg これを受けて15年10月に設けられたのが、厚労省の有識者会議「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」(労働紛争解決検討会)だった。委員は有識者、使用者側、労働者側、紛争処理に携わる弁護士など22人が集まる大所帯のテーブルで、計20回にわたる議論を経て17年5月に報告書策定にこぎ着けた。委員の見解と立場はさまざまで、報告書では法制化への道筋を明確に示せず、金銭解決は「選択肢として考え得る」というトーンに留まった。

 本来であれば、この検討会の報告書を「たたき台」に労政審・労働条件分科会へと進むのだが、「選択肢として考え得る」案について法技術的な専門家の検討が必要とした報告書内の一文や、政府の「新しい経済政策パッケージ」(17年12月)を踏まえ、同分科会は再度の検討会設置を厚労省に要請。こうして18年6月に発足したのが、現在も議論を続ける専門家6人による「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(解雇時の金銭救済検討会)=写真=だ。

 多様な働き方と柔軟な労働移動を可能とする方策として推し進めたい政府だが、一定のハレーションを起こすテーマとあって、「働き方改革関連法」などこの間の他の重要法案審議との兼ね合いや政権の求心力など、諸般の情勢を見極めているうちに労政審に載せる機を逃した感が否めない。労働紛争解決検討会と解雇時の金銭救済検討会の「2つの検討会」だけで5年以上が経過しており、足踏みを続けるにしても「次の一手」が求められる展開となっている。

賛成・反対の主張と法技術的議論の行方

 「解雇無効時の金銭救済制度」の法制化が進まない理由は...


※こちらの記事の全文は、有料会員限定の配信とさせていただいております。有料会員への入会をご検討の方は、右上の「会員限定メールサービス(triangle)」のバナーをクリックしていただき、まずはサンプルをご請求ください。「triangle」は法人向けのサービスです。


【関連記事】
「解雇の金銭救済」で議論再開、厚労省の有識者検討会
約1年ぶり、出口は見えず(11月16日)

PAGETOP