新型コロナウイルスの感染拡大で"窒息寸前"まで追い込まれた日本経済が、夏場以降、復活の兆しを見せている。4~5月の緊急事態宣言が解除されたこと、「GoToトラベル」など一連のGoToキャンペーン効果、中国など海外景気の持ち直しといった要因が考えられる。コロナとの共生方法がある程度わかり、ビジネスや日常生活の規制が徐々に緩和されたことも背景にあるが、ここにきて感染の「第3波」が押し寄せつつあり、経済復活に暗い影を落としている。(本間俊典=経済ジャーナリスト)
政府の緊急事態宣言は4月7日に東京など7都府県に発動され、16日に全国に拡大、厳しい外出制限を実施した。感染の勢いが弱まった5月14日に東京、北海道など8都道府県を除く39県で解除され、25日には全都道府県で解除された。7月下旬からは冷え込んだ消費喚起策として「GoToキャンぺーン」を開始。まず「GoToトラベル」を感染の多い東京を除いて始め、10月からは東京も加えた。
一連の感染防止策は経済活動に甚大な影響を与えた。外出規制などの影響をモロに受けたホテル、飲食、航空、観光などの業界は大きな打撃を受け、内外の需要減によって多くのメーカーも生産調整を余儀なくされた。3月期決算の発表が集中した5月下旬当時、年度後半や通期見通しを発表できない企業が続出し、先行き不安が充満した。4~6月期の実質GDPは前期比28.1%減(年率換算)という記録的な落ち込みをみせた。
しかし、緊急事態宣言の解除後は徐々に経済活動も回復しており、その象徴が自動車業界だ。国内販売台数は5月に前年の半分程度まで激減したが、6月以降は徐々に持ち直してマイナス幅が縮小、10月には13カ月ぶりに対前年30%近いプラスに転換した。生産台数も9月以降、中国や北米市場の回復によって前年を上回るようになった。メーカーによってバラつきがあるものの、通期予想を上方修正する企業が相次いでいる。
自動車以外では、緊急事態宣言下の「巣ごもり消費」の影響が色濃く表れ、スマホゲーム、ホームセンター、園芸センターといった業界が好調な一方で、外食業界や観光業界などは軒並み大幅ダウンし、大規模なリストラを迫られている企業もある。しかし、10月になるとおおむね前年の8割程度まで回復しており、GoToキャンペーンの支援をテコに業績回復を狙う。
こうした動きを反映して、7~9月期のGDPがどの程度まで回復するか注目されている。これまで発表された民間シンクタンクの予測を平均すると前期比19%増と、4~6月期の同28%減から大きく持ち直す予想だが、減少分をすべて取り戻すほどの回復はむずかしいという見方が支配的だ。
混雑は必至?紅葉の京都
しかし、ここに来てコロナの「第3波」が押し寄せ、経済に再び暗雲が覆う状況になった。10月に入って感染者数が再び増え始め、11月には1日の新規感染者が1600人を超えて過去最高に達した。しかも無症状、中高年の感染の割合が増えており、医療機関などから「そろそろ限界」との悲鳴が上がっている。冬場のインフルエンザ流行への警戒も必要で、再びテレワーク体制を強める企業が増えるなど、「3密」回避の動きが活発になっている。
政府は年内に「10兆~15兆円規模」ともいわれる第3次補正予算の編成をまとめたい考えだ。雇用調整助成金(雇調金)の特例延長、GoToトラベルの期間延長、医療機関の支援などに振り向けるとみられる。ただ、すでに実施されているGoToトラベルでは有名観光地を中心に人出が急増しており、「感染拡大の温床になる」との批判が絶えない。
感染拡大を押さえながら経済回復を狙うという、...
※こちらの記事の全文は、有料会員限定の配信とさせていただいております。有料会員への入会をご検討の方は、右上の「会員限定メールサービス(triangle)」のバナーをクリックしていただき、まずはサンプルをご請求ください。「triangle」は法人向けのサービスです。