直近の統計適用を原則とする一方、例外的対応も――。派遣元が「労使協定方式」を採用する際に用いる来年度適用分の職種別一般賃金水準について、厚生労働省は10月20日、条件付きで「今年度適用している統計を用いることも可能」とする局長通達を出した。「新型コロナウイルス感染症拡大が経済と雇用に与える影響を見極めたい」との考えから、7月の公表を延期して運用のあり方を検討してきた厚労省。雇用の維持・確保を重視し、労使がぎりぎりまで歩み寄った「苦肉の策」だった。(報道局)
今年4月に施行された改正労働者派遣法は、いわゆる「同一労働同一賃金」を目的にしており、派遣労働者の賃金や待遇は「派遣先均等・均衡」か「派遣元の労使協定」のいずれかの待遇決定方式を用いることが義務化された。この選択制2方式のうち、「労使協定方式」を選んだ場合には、局長通達の一般賃金水準より同等以上であることが要件だ。施行初年度の現在運用されている水準は「2018年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金」(賃構統計)と、「2018年度職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額」(ハロワ統計)の2種類。「労使協定方式」を選択している事業所は、厚労省調査の速報値で約9割を占めている。
今回の局長通達の要所を整理すると、原則は「新たに示した19年賃構統計と19年度ハロワ統計」を適用。ただし、例外的対応として、「雇用維持・確保を目的に、職種・地域ごとに一定の要件を満たし、労使で合意した場合には18年(度)の統計調査を用いることも可能」とした。要するに、規定通り19年(度)の水準を出す一方、条件付きで現状維持を認める運用も示した格好だ。
局長通達が示される1週間前の10月14日、厚労省は労働政策審議会労働力需給制度部会(鎌田耕一部会長)に今回の運用に関する考え方と方法を説明し、理解を求めた=写真。労働者側委員は「コロナ禍で派遣社員に大きな影響があることは承知している。しかし、改正派遣法の狙いは、均等均衡待遇を確保して派遣社員の処遇向上を図ることであり、現状賃金を用いることは厳に例外的な対応であるべき」と強く指摘。使用者側委員は「雇用・採用関連の動きについて企業は極めて厳しい状況にある。少なくとも現状の水準を用いることができるのは妥当」との見解を示した。
改正法施行の初年度でイレギュラーな対応を迫られた...
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