どうすればサラリーマン男性が育児休暇を取ってくれるか――。女性活躍推進の一環として政府が2010年度から旗を振っている「イクメンプロジェクト」政策がさっぱり進まず、今年から労働政策審議会で新制度を設けてピッチを上げようと検討を始めた。しかし、企業や男性との意識に大きな隔たりがあり、前途多難な雲行きだ。(報道局)
妊娠・出産・育児については、労働基準法と育児・介護休業法によって、産前・産後の14週間の「産休」と産後最大2年間の「育休」を取得できることになっている。また、復職した場合も短時間勤務や子供の看護休暇などを取得できる。妻の出産後、制度上は夫も育休を取得できる。その意味で日本の制度は充実しているものの、内実は「仏作って魂入れず」が実態だ。
育休の場合は圧倒的に女性の利用が多く、男性の利用は極めて少ない。厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、育休の取得率は女性が80%台で推移しているのに対して、男性は一ケタ台。イクメンプロジェクトの開始以降、取得率は徐々に上昇して、19年度は7.48%まで上がったものの、まだお話にならない低さだ=グラフ。このままでは政府目標の「20年に13%、25年に30%」は絵に描いた餅に終わる。取得期間も4割近くが「5日未満」で、8割が「1カ月未満」。対して、女性は9割近くが「6カ月以上」取得している。
なぜ、男性は育休を取らないのか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、正社員が育休を取らない理由として、「会社の制度整備が不十分」「職場が取得しにくい雰囲気」「収入を減らしたくない」が2割ほどあり、「会社、上司、職場の理解がない」「残業などの業務が多忙」「自分にしかできない仕事を担当」などが1割ほどあった(複数回答)。要するに、男性の正社員にとっては自分も会社も仕事最優先で、「子供の面倒をみているヒマなどない」というわけだ。
そのしわ寄せが女性の負担になっているのは明らかで、やはり同社の調査では出産前まで仕事をしていた女性の約半数は出産を機に退職しており、その多くが「仕事を続けたかったが、育児との両立がむずかしかったので」と理由を挙げている。これを男性が育休を取らない理由と合わせると、「男は外で仕事、女は家で育児」という旧来の男女分業体制の残りカスがしつこく残っていることがわかる。
育児だけでなく、日本の男性が家事全般に費やす時間は先進国では極めて少なく、1日あたりの家事・育児の時間は平均1時間23分。米英仏の2時間台、ドイツ、スウェーデン、ノルウエーの3時間台などに比べるとケタ違いに低い(総務省「社会生活基本調査」より)。日本の高度成長の原動力となった男性正社員中心の「メンバーシップ型」経営が曲がり角に来て、女性や高齢者も含めた「総合力」で勝負しなければならない現代社会にとって、こうした男女格差はもはや不合理でしかない。
政府がハッパ掛け、労政審で議論開始
このため政府は安倍政権時代の今年5月、「少子化社会対策要綱」を閣議決定し、「男性の家事・育児参画の促進」を主要柱に据えた。7月の「経済財政運営と改革の基本方針」などでも同じ目標を掲げ、菅政権になっても方針は継続。田村憲久厚労相は10月20日の閣議後会見で「いろいろ意見はあるかもしれないが、男女共同参画にとって男性の育児参加は非常な意義があり、引き続き推進する」と政府の考えを明確にしている。
今回の労政審の審議はこうした流れを受けたもので、現行の育休制度より柔軟で利用しやすい新制度を設ける方向で議論が進んでいる。具体的には...
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