新型コロナウイルスの感染拡大は日本経済を直撃し、政府はこのほど2020年度の実質成長率(GDP)予測をマイナス4.5%に変更、年初のプラス1.4%から大幅に下方修正した。感染の「第1波」がピークに達した4~6月期の落ち込みが最大要因で、リーマン・ショックでマイナス3.4%を記録した08年度をさらに下回るとみているが、それも7月以降の「第2波」の影響は考慮しておらず、感染動向によっては一層の下振れが予想される。(本間俊典=経済ジャーナリスト)
内閣府の試算によると、4~6月期はGDPの最大項目である個人消費が前年度比4.5%減となるのをはじめ、企業の設備投資も同4.9%減、住宅投資も同9.0%減、輸出も同17.6%減となり、ほぼすべての項目で年初のプラス成長からマイナス成長にダウンする。
全国に非常事態宣言が敷かれた4月上旬から5月下旬の間、厳しい外出自粛やテレワークの推進などにより、運輸、旅行、観光、飲食などの消費産業を中心に売り上げが激減して、個人消費を押し下げたことが要因。感染の世界的な広がりによって、自動車などの輸出産業も大幅な生産調整を余儀なくされ、日本経済は内外需ともに急落した。
ただ、これは先進各国に共通しており、米国やEU(欧州連合)も4~6月期は30%以上の落ち込みを記録、日本も間もなく発表される数字はマイナス30%前後になると予想されている。ただ、中国は早期の感染封じ込めに成功したこともあり、1~3月期こそマイナス6.4%だったが、4~6月期は早くも2.3%にプラス転換。コロナ禍の被害が少なかった台湾、ベトナムなどの東アジア地域の落ち込みも欧米ほどではないようだ。
旅行需要は増えない?
4~6月期の大幅ダウンは官民とも「想定内」だが、問題は7~9月期以降の回復見通しだ。政府は、7月以降は感染拡大に歯止めが掛かり、旅行などの需要が回復するとともに、コロナ禍で課題となったデジタル化への設備投資が活発になるとして、経済全般の「V字回復」を見込んでいた。いわば、「コロナと経済の両立」を図るという目論見だった。
しかし、7月以降の状況は感染に歯止めが掛かるどころか、逆に感染者数が増え続けると同時に、全国に拡大している。事実上の「第2波」とみる医療関係者も多い。非常事態宣言の全面解除により、6月に入って人の移動が自由になるとともに、若者を中心とした感染が一気に拡散した。医療体制のひっ迫を恐れる自治体が、再び非常事態宣言を出し始めるなど、経済活動にとっても再び逆風が吹いている。
これに対して、政府は6月、総額32兆円という過去最大級の第2次補正予算を成立させ、医療体制やPCR検査体制の拡充に加え、雇用調整助成金や家賃支援給付金などの給付を通じて事業者支援を図る構え。ただ、そのうち10兆円を「使途不明」の準備金に充てたことから、国会で野党の追及を受けるなど、どこまで即効性があるのか不透明だ。
コロナ収束後の消費回復に向けて、政府が旅行・観光の需要回復を狙った「Go toトラベルキャンペーン」も、4月の第1次補正予算に盛り込まれてはいたが、7月からの前倒し実施に対して医療側などから「感染を拡散させかねない」との批判にさらされ...
※こちらの記事の全文は、有料会員限定の配信とさせていただいております。有料会員への入会をご検討の方は、右上の「会員限定メールサービス(triangle)」のバナーをクリックしていただき、まずはサンプルをご請求ください。「triangle」は法人向けのサービスです。