新型コロナウイルスの感染拡大の波が企業の雇用を直撃し、3月ごろから主要な雇用関連指標は軒並み急速に悪化している。感染の第1波は過ぎたとみられるものの、雇用が従来のように急回復するかどうかは極めて不透明な情勢であり、むしろ年内いっぱいは感染の後遺症を引きずるとの見方が強まっている。労働市場は長年の「人手不足」から、一転して「人余り」となる懸念をはらんできた。(報道局)
欧米の先進諸外国に比べ、日本の失業率や失業者数、新型コロナに伴う死者数などが桁違いに低いという事実を前提に、懸念される日本の現状を多面的に精査してみたい。
総務省の労働力調査では、年明けから完全失業率はジワジワ悪化。1、2月の2.4%から3月は2.5%、4月は2.6%、5月は2.9%と上昇テンポを速めている。完全失業者も1、2月の160万人台から3月は172万人、4月は178万人、5月は197万人に。3、4月は前月より6万人増え続け、5月は一気に19万人も増えた。
その"前段"となっているのが、会社員や自営業者らで、自宅待機などを余儀なくされた休業者の増加。同省によると1、2月の200万人弱から3月に急増して249万人、4月は597万人、5月も423万人に達した。
休業は一時的な措置で、企業活動が復活すれば再び就業できるようになるが、低迷したままだと失業につながるか、職探し自体を諦める「非労働力人口」になりがち。5月の休業者が4月より174万人減ったのは、こうした失業や非労働力人口の増加の裏返しとみられる。
休業者は宿泊・飲食サービス業や卸・小売業など、外出自粛や営業自粛の影響をモロに受けた業種に多く、雇用形態ではパート・アルバイトが中心。5月の場合は423万人のうち、パートが89万人、アルバイトが66万人と全体の4割近くを占めており、非正規労働者にシワ寄せが集中していることが鮮明になっている。
政府は今回、リーマン・ショック後の非正規の解雇・雇い止めが多発した反省から、雇用調整助成金の要件を大幅に緩和して、企業に対して労働者の雇用維持を再三にわたって要請してきた。しかし、雇調金の使い勝手が悪くて利用が間に合わないことも急増の一因になっているようだ。
それをある程度裏付けているのが、厚生労働省がコロナ禍以降に公表している「解雇・雇い止め」(累計、見込みを含む)の数で、2月の280人程度から月を追うごとに急増し続け、5月に1万人を突破。6月半ばに2万5000人、7月1日には3万人を超えるハイペースだ=グラフ。これはハローワークなどが把握した数字を集計したもので、全体をカバーしているとは言えないものの、失業者数の増加とほぼリンクしている。
5月に緊急事態宣言が段階的に解除され、6月19日には県外移動の自粛も全面解除された。感染拡大の防止と経済活動を両立させる「新しい生活」に局面が移ったが...
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