2020年度の最低賃金(最賃)について、厚労相の諮問機関である中央最低賃金審議会で議論が始まった。7月下旬に「目安」が出る予定だが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大によって中小企業を中心に業績低下に見舞われている企業が多く、19年度まで4年連続で続いた「3%引き上げ」に赤信号がともっている。(報道局)
安倍政権はこれまで、好調な景気を背景に「成長と分配の好循環」「労働者の格差是正」を目的に、最賃の大幅引き上げを掲げ、15年度から「早期に全国平均で1000円」を目指してきた。これにより、最賃は16年度から毎年3%台で伸び続け、19年度は全国平均で901円となった=グラフ。
最賃は物価動向などを勘案してA~Dの4ブロックに分かれ、19年度の場合、最も高いAランクでは前年比28円アップの975円に。中でも東京都は1013円、神奈川県も1011円と初めて1000円の大台に乗せた。Bランクは27円アップの874円、Cランクは26円アップの838円、Dランクは28円アップの791円となった。
伸び率もAランクこそ2.96%だったが、Bランクは3.19%、Cランクは3.20%、Dランクは3.67%となり、全国平均では3.09%。16年度から4年連続で3%台の伸び率を維持しているうえ、伸び率では政府目標の一つである「地域格差の是正」が進行していた。
しかし、今年は2月ごろからにわかに新型コロナの感染拡大が進み、政府は営業自粛や外出制限措置を打ち出した。このため、企業活動も生産ライン停止や消費激減の影響をモロに受け、業績は大幅に悪化。東京商工リサーチによると、全上場企業のうちコロナ禍で業績を下方修正した企業は2割強にあたる898社にのぼり、マイナス分の合計は売上高で6兆2566億円、利益で4兆682億円にのぼるという事態となった(いずれも6月24日時点)。企業破綻も285件に達している。多くの中小企業は大企業の傘下にあり、「親の苦境」の影響から免れることは不可能だ。
この惨状を受け、経済界からは最賃の引き上げ凍結を望む声がにわかに高まっており、日本商工会議所などの中小企業団体は4月、政府に「最賃引き上げの凍結も視野に入れた水準の決定」を要望した。16年度から3%台の賃上げが続いた結果、4年間で103円、13%アップに達し、昨年あたりから「この引き上げペースでは限界」との声が中小企業などから出ていた。そんな厳しい状態のところへ、コロナ禍に追い討ちをかけられた、というのが企業側の実感だ。
これに対して連合などの労働側は「コロナ禍で賃金減や雇用不安が急増しており、セーフティーネットが必要」と引き続き最賃の引き上げを求めている。しかし、政府の再三の要請に応じて、多くの企業が雇用維持を死守しているのが現状であり、その中で従来と同じ賃上げを図ることは雇用の悪化を招きかねないという懸念も強く、労働側の主張はいまひとつ迫力がない。
中小企業は異例の「引き上げ凍結を」
一方、政府は全世代型社会保障検討会議で...
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