新型コロナウイルスの感染拡大が企業業績を直撃している。中国をはじめとする世界的な生産活動の急減で製造業がダメージを受けたのに加え、国内でも外出自粛や休業要請などで消費関連企業が窮地に陥っているためだ。3月期決算企業を中心に業績の下方修正や決算見通しの延期が相次ぎ、多くのエコノミストが「長引けばリーマン・ショック当時よりも影響は甚大」とみている。(本間俊典=経済ジャーナリスト)
政府が4月23日に発表した4月の月例経済報告では、「新型コロナの影響により、景気は急速に悪化して厳しい状況にある」と表現した。景気判断の下方修正は2カ月連続で、「悪化」というはっきりした文言を使ったのは、リーマン・ショック後の2009年5月以来、11年ぶり。月例報告は景気判断の表記を微妙に変える「霞が関文学」の見本だが、それでも「悪化」と言わざるを得ないほど、政府の危機感がにじみ出ている。
それは、数字ではっきり確認できる。東京商工リサーチによると、6日までに業績の下方修正を表明した上場企業は3月期決算を中心に410社にのぼり、そのマイナス分を足し上げると売上高で3兆3533億円、利益で2兆6016億円となっている。業種別では、製造業が164社と最も多い4割を占め、サービス業の82社、小売業の63社などが続く。
百貨店も大打撃を受けている
このうち、6日までに3月期決算を発表した企業は276社。最も多かったのは「減収減益」の103社だったが、「増収増益」も96社あった。コロナ禍以前まで業績が好調だった企業や、コロナ以後も営業を続けることができたスーパーなどが増収増益になった。しかし、各社の懸念は1年後にあり、21年3月期の業績予想について、6割もが「未定」としている。感染拡大がいつまで続き、収束時期がまったく見通せないことが要因だ。発表を済ませた276社は全体の1割余に過ぎないことから、今後、「未定」の割合が増える可能性が高い。
一方、海外子会社の監査が終わらない、テレワークを急ぎ導入したなどの理由で混乱が生じ、発表予定を延期した企業は延べ495社にのぼっている。通常なら、5月後半は決算発表の集中時期になるが、今年は発表日や株主総会の開催方法なども含めて対応に追われる企業が続出する異例の光景となっている。
日本経済研究センターによると、民間エコノミストの実質GDP伸び率の平均予測は1~3月期が年率4.06%減、4~6月期が同11.08%減。ただし、これは政府が4月7日に7都府県に緊急事態宣言を出した直後の予測であり、16日に宣言を全国に拡大してからの分はまだ織り込んでいないことから、4月以降の落ち込みはさらに拡大する可能性が高そうだ。
最大の問題は、国内外ともに収束時期が不透明なことだ。海外では感染拡大がヤマを越えた中国や欧州各国でロックダウン(都市封鎖)が解除されているが、第二波の感染が懸念されるうえ、渡航禁止措置などは続くため、インバウンド需要の回復は当分望めない。国内も、仮に5月末で自粛要請が解除されたとしても、...
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