世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。政府は16日、東京など7都府県以外でも感染が広がっているとして、特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の対象地域を全国に拡大した。予断を許さない状況が続く中、特に欧米と比較して日本の感染状況はどのような実態にあるのか。関西外国語大学外国語学部の小嶌典明教授は、厚生労働省の公表データを読み解き、「日本は想像以上に頑張っている」と分析。国民の更なる感染防止への取り組みに期待を込めて、アドバンスニュースに寄稿した。(報道局)
国際比較でわかる、意外な現状
感染者や死亡者は、諸外国に比べ、一桁も二桁も少ない。わが国の人口は、世界全体の約1.6%。感染者の割合(0.4%台)や死亡者の割合(0.1%台)は、この人口比を大幅に下回っている。世界的には、致死率(感染者に占める死亡者の割合)が上昇しているのに対して、わが国では、むしろ低下傾向にある。
厚生労働省が毎日公表・更新している国・地域別のデータからは、新型コロナとの闘いにおいて、わが国が想像以上に頑張っている様子がよくわかる。
2020年4月1日以降の推移をグラフにすると、わが国における新型コロナの感染者数や死亡者数は、横軸(X軸)とほぼ重なり、いずれもゼロに限りなく近いようにみえる。
他方、米国の現状をみると、感染者数では、4月当初から他国を大きく上回る、突出した状況にあったが、死亡者数でも、9日にはスペインを、12日にはイタリアを上回るものとなった。感染者数や死亡者数の多いヨーロッパ諸国と比べても、グラフでみる右肩上がりの勾配は、飛び抜けて急なものとなっている。
しかし、米国の場合、致死率までが他の国よりも高いというわけでは必ずしもない。増加傾向にあるとはいえ、米国の致死率(4月17日現在、4.93%)は、世界の平均(6.76%)を下回っており、4月2日までは、わが国のほうが高かった。
この間、とりわけ大きく致死率が増加したのは、フランスと英国であり、これにイタリアとスペインを加えた4カ国の致死率が、現在、ヨーロッパにおける人口4000万人以上の国のなかでは二桁台を記録するものとなっている。ただ、このような現状も、グラフにしないと、なかなかわからない。
こうした世界の動きとは対照的に、わが国の致死率は、4月1日以降、13日までの間に半分近くにまで減少。その後、増加に転じたとはいえ、いまでも2%を下回るレベルにある(4月17日現在、1.61%)。
4月16日、新型コロナの感染者数は、世界全体で200万人を超え、政府の対策本部も、緊急事態宣言の対象区域を全都道府県に拡大した。感染者数の増加を考えると、確かに油断は禁物であるが、過度に現状を悲観する必要はない。
――最低7割、極力8割程度の接触機会の低減を目指す――。この政府の方針をしっかり守って、もう少し我慢を続ければ、必ず道は拓ける。
負けるなニッポン!!
小嶌典明氏(こじま・のりあき)1952年大阪市生まれ。関西外国語大学外国語学部教授。大阪大学名誉教授。同博士(法学)。労働法専攻。規制改革委員会の参与等として雇用・労働法制の改革に従事するかたわら、国立大学の法人化(2004年)の前後を通じて、人事労務の現場で実務に携わる。主な著作に『職場の法律は小説より奇なり』(講談社)、『メモワール労働者派遣法――歴史を知れば、今がわかる』(アドバンスニュース出版)のほか、2019年に出版された最新作に『現場からみた労働法――働き方改革をどう考えるか』(ジアース教育新社)がある。