新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、企業活動や個人消費に深刻な影響を与える事態になってきた。感染の抑制に必要な「密閉・密集・密接(3密)」の回避の波をモロにかぶっているためだ。2月中旬ぐらいまで多かった「3~4月ごろがピーク」という楽観的予想ははずれ、長期戦を覚悟しなければならない局面に発展。その結果、業績悪化が雇用に及ぼす影響が懸念され、続いていた「人手不足」から一転して「雇用不安」が日本経済にのしかかってきた。(報道局)
日用品の"モノ不足"が続く
国内景気は昨年10月の消費税率引き上げなどから、10~12月期の実質成長率は前期比1.8%減、年率換算で7.1%減と大きく落ち込んだものの、当初、今年1~3月期はその反動でプラス成長に戻るとの見方が少なくなかった。しかし、3月に入って新型コロナの勢いが世界的に広がり、日本でも同月後半に感染者が急増すると、様相は一変。「密閉、密集、密接(3密)」回避のため、東京などで週末の外出の自粛要請などが相次ぎ、インバウンド需要をはじめとする消費活動が著しく落ち込んだ。
また、7月の東京オリンピック・パラリンピックの1年延期、トヨタなど自動車メーカーの一時的な生産停止など、景気にとって大規模なマイナス要因が続いていることから、1~3月期の成長率もマイナス3%前後という大幅な落ち込みとなりそうだ。
感染の終息時期が見通せないことから、今後、大きな問題になるのが雇用だ。帝国データバンクの企業調査によると、4月1日時点で業績の下方修正を発表した上場企業は141社にのぼり、売上高の減少予想は1兆円を超えた。雇用吸収力の大きい自動車メーカーが、生産停止に伴う期間工の新規募集を一斉に停止。長年続いた空前の「人手不足」から、一転して「雇用不安」が再燃しそうな気配が漂っている。
実は、これまでの人手不足が日本経済全体に及んでいたかと言うと、そうではない。有効求人倍率が1.63倍のピークを記録した昨年当初でも、職業別にみると「介護職」「接客」「建設」「運転」などが4倍前後だった一方で、求職者の多い「事務職」は0.5倍程度で推移するなど、業種によってかなりの開きがあった。賃金水準が低く、勤務条件も厳しいとされる職種が慢性的な人手不足の主要因となり、求人倍率を押し上げてきたのが実態だ。
しかし、今回のコロナ感染拡大が人手不足業種を直撃する事態になっている。国内外の観光客を相手にしてきた航空会社や旅行会社に続き、「3密」回避の"ターゲット"になった飲食チェーンや百貨店などが次々と営業自粛に追い込まれ、正規・非正規を問わず雇用状況はにわかに厳しくなっている。2月時点の統計ではまだ顕在化していないものの...
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