2020年の春闘が大きくサマ変わりしている。労使交渉の例年の中心テーマである賃上げに加え、経営者側が「日本型雇用の見直し」を正面に据えてきたためだ。長年、賃上げ交渉は日本型雇用を前提としており、前提自体の見直しに踏み込んだ提案に対し、労働組合側は戸惑いを隠せない。(報道局)
経団連がこのほど、春闘向けに公表した「経営労働政策特別委員会報告」では、政府が進める「Society5.0」社会の実現に向け、価値創造力と労働生産性を高める働き方を目指すとしており、具体的には賃金引き上げ、日本型雇用の見直し、働き手のエンゲージメント(やりがい、働きがい)向上などを挙げている。
その背景として、今後の日本は労働人口が大幅に減少するうえ、経済のグローバル化とデジタル化が世界規模で進む時代に入っており、人材の柔軟な働き方を通して生産性の上昇を図らなければならない。しかし、企業が社員を長期間にわたってじっくり育てる従来のメンバーシップ型雇用を中心に据える限り、変化の激しい競争に勝てず、多くの企業はそうした余裕もなくなっているのだ。
日本型雇用は新卒一括採用、年功序列、終身雇用、企業内組合など、戦後日本の労働制度の枠組みとなってきた。これが奏功して高度成長を実現し、安定成長期になっても技術革新を生み出す業績拡大の原動力となった。労働組合側も、毎年の賃上げ闘争に専念できた。
しかし、それがもはや企業経営の足かせになっていることから、経団連は新卒一括採用にジョブ型社員の採用を加えた通年採用、無限定正社員にジョブ型正社員も加えた複線型制度の構築、社員のデジタルスキルの向上などを提案しており、すでにこれらを採用している企業も増えている。
日本企業の労働生産性はOECD加盟36カ国中で、時間あたりでも年間付加価値でも20位前後の低位で推移しており、1990年代をピークに、上位10の常連だったころの面影はない。このまま労働人口が減少すれば、その分だけGDPも下がるのは明らかであり、生産性の向上によってカバーすることが日本全体の重要課題となっている。
年間を通じた労使交渉のテーマに
これに対して、労働側は生産性の向上が必要なことは理解しつつも、雇用・賃金の安定を失いかねず、格差拡大が進む懸念も強いことから、警戒感を隠さない。このため……
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