来年夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催(7月24日~8月9日)まで1年を切った。国内企業の約半数は日本経済の成長に五輪は有効だが、自社業績への影響はなく、開会中の勤務なども「通常通り」と考えていることが、帝国データバンクの調査で明らかになった。開催に向けた準備が日増しに熱を帯びる中、企業側のクールな視線が目立つ。(報道局)
調査は10月後半、全国2万3731社を対象に実施、43%にあたる1万113社から有効回答を得た。東京五輪に関する調査は13、16年に次いで3回目。
もう「秒読み」段階
東京五輪が日本経済の持続的成長に有効かどうか聞いたところ、48.6%が「有効」と答えたが、五輪開催が決定した直後の13年当時の64.9%からは16.3ポイントも減少し、逆に「有効だと思わない」が27.0%で13.8ポイント増えた。開催決定から6年が過ぎ、当初の熱狂が覚めたうえ、内外の景気状況も変わってきたことが背景にありそうだ。
自社業績への影響も「プラス」と答えた企業は15.0%に過ぎず、「マイナス」が10.5%、「影響はない」が過半数の56.1%を占めた。ただ、足元の東京ではさすがに「プラス」が21.4%を占めているが、それでも2割余に過ぎず、「オリンピック景気」と呼ぶほどの活気は見られない。
このため、五輪期間中の働き方については、「通常勤務」が51.9%で、「検討していない」が25.9%と合わせて8割近くに達している。あとは「物流・配送を抑制」(5.8%)、「期間中の休暇を設定」(4.7%)などがあった程度だ。もっとも、都内企業では「通常勤務」は35.2%に低下し、1割以上が休暇や時差通勤などの対応策を検討しているという。
都内では現在、渋谷や日本橋などの地域を中心に大規模な再開発が進んでいる。政府観光局などの試算によると、大会期間中の来日選手団らは約20万人、選手団らを含めた外国人応援団・観光客は年間で約4000万人を予想、みずほ総研が17年時点で弾き出した直接・間接の経済効果は30兆円にのぼる見通しだ。
しかし、こうした"五輪特需"に対する数字と企業の実感にはかなりのズレが生じており、インバウンド効果も一時的なものとみる冷静な姿勢が目立つ。東京商工会議所が今年3月に実施した都内の中小企業に対する調査でも、社内や地域の盛り上がりを「感じている」企業は2割程度で、「感じない」企業が半数近くにのぼっている。13年当時の盛り上がりぶりを現在と比べると、「半分以下」と答えた企業が4割近くあり、東京の"足元企業"でさえ、その多くが盛り上がりを実感していない結果が出ている。
帝国データの調査でも、「最近は五輪開催後のマイナス景気が話題となる」「一時的な成長はあっても、前回のようなインフラ整備のレガシーはそれほど見込めない」と懐疑的な声も聞こえる。
インバウンド需要の定着がカギに
前回の1964年五輪では、東海道新幹線や高速道路などの整備が急ピッチで進み、62年から2年ほどは「オリンピック景気」に沸いたが、五輪後は急速に悪化。65年にはサンウエーブや山陽特殊製鋼などの倒産、山一証券などへの日銀特融事件といった経済事件が相次ぎ、日本経済は「証券不況」に沈んだ歴史的事実がある。
その点、現代の日本経済は当時よりはるかに巨大でセーフティーネットも整備されているため、当時のような混乱は起こらないという見方が支配的だ。しかし...
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