政府の「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」はこのほど、2021年度(22年3月)卒の大学生・大学院生の就職活動について、3月に企業の広報活動、6月に採用選考活動、10月に内定という日程を決めた。16年度から6年連続で同じ日程となったが、「新卒一括採用」の是非が盛んに議論されると同時に、就活ルールの形骸化が確実に進んでいる中で、課題を先送りしたとも言える。(報道局)
連絡会議が公表した「考え方」では、就活ルールについて、「終身雇用や年功賃金なども含め、我が国の雇用の在り方全体に掛かる課題」と問題点を指摘し、政府の未来投資会議で議論を進めるべきだとする一方で、「ルールの急激な変更により、学生が安心して学業に専念できない事態は望ましくない」という理由で、従来日程を踏襲した。22年度についても、「日程変更の必要が生じる可能性は高くない」という表現で、現状維持の方向性をにじませている。
その根拠は、文部科学省が実施した調査。企業、大学、学生を対象に実施したところ、「現在の開始時期でよい」と回答した比率が、企業は約32%、大学は約46%、学生は約45%とそれぞれ最多を占めたからだ。3者とも「何らかのルールは必要」との認識でほぼ一致しており、具体的には現行ルールでOKという「三方良し」の結果となった。企業も学生も、「ルールの急激な変更」には抵抗感が大きいとみられる。
その一方、現行ルールが随所で破綻していることも確かで、企業も学生も「厳守」する意識はあまりないようだ。大学側への調査でも、学生が大企業の内定を得た時期は「6月以降」が47%で最も多いが、「4月」が10%、「5月」も18%あった。協定に縛られない経団連の非加盟企業や加盟企業の“ルール破り”などが半ば公然と行われている。
また、近年は就活支援企業が主催する企業合同説明会以上に、企業と学生が重視しているものにインターンシップがある。学生の参加時期は8、9月と2月に集中しており、参加時期も1~2日が圧倒的多い。夏冬休みの期間中に集中するのは当然との見方もあるが、わずか1~2日の参加ならそれ以外の時期でも可能なはず。大学側も2月のインターンシップについては「3月の広報解禁を目前に控えた企業側の実質的な広報活動」ととらえており、事実上の“抜け道”となっていることは明らかだ。
それでもなお、関係者がルールの必要性にこだわるのは、企業が他社(とりわけ同業他社)の動向に神経を使い、学生は有名大企業への志向が根強いため。どちらも、就活ルールが歯止めとなって、「乗り遅れる」という不安心理は緩和される。形骸化しているとはいえ、一応のルールがあることで、企業は採用コストを抑え、学生は学業に専念できるという大きなメリットがある。
新たなキャリア形成法は?見えない道筋
しかし、現行の就活ルールの背景にある最大の問題は、もはや日程などではなく人材育成をどうするか、にある。新卒一括採用が効果を発揮できたのは、年功序列・終身雇用が機能していたためであり、これまで企業は新人を社内で育てて戦力化してきた。しかし、現在はそうした余裕を失いつつあり、中途採用の即戦力を求める方向も強まっている。
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