10月から、現行の消費税率8%が10%に引き上げられる。ここまで来ればさすがに“後戻り”はできず、官民とも引き上げ対策に追われているが、「引き上げ→景気後退」を前提にした対策の繰り返しは、もう不要ではないか。2%程度の引き上げで騒ぐ以上に、それによって社会保障の長期的な持続が可能かどうかに議論を絞るべきだからだ。
増税前セールは効果あり?
今回の引き上げで最大の課題となっているのは、軽減税率の実施。日常生活に必要な飲食料品(外食、酒は除く)や新聞は税率が8%に据え置かれる。しかし、この「飲食料品」が鬼門で、「サービス」が加わると10%になるというから、同じファストフードの商品でも持ち帰りは8%、店内飲食は10%など、ボーダーラインのケースが続出しそうだ。消費者にとっても、業界にとっても面倒な線引きであり、引き上げ当初は混乱が予想される。
軽減税率だけではない。増税後の消費落ち込みを防ぐため、政府はキャッシュレス決済のポイント還元、プレミアム付き商品券の配布などを通じてアピール。幼児教育・保育の無償化によって、お金の掛かる子育て世帯の負担軽減を図るなど、“痛税感”の緩和に必死だ。
2%の増税分は年間約5.7兆円と試算されている。しかし、軽減税率、プレミア券、幼保無償化などの増税対策によって、19、20年度の政府予算は増収に回らず、実質的な増収は21年度から。それも軽減税率や幼保無償化などはそれ以後も続き、景気対策も一度実施するとやめるのは困難というのが常識だから、かつての「三党合意」の目標は遠のくばかりだ。
三党合意は、民主党政権時代の12年、同党、公明、自民の3党が「税と社会保障の一体改革」で取り決めたもの。税率を8%、10%と段階的に引き上げ、毎年増える社会保障費の財源確保と財政健全化の両立を目指した。景気の影響を受けにくい消費税を「政争の具」とせず、次世代に負担を先送りしないとの理念も込められていた。
しかし、安倍政権になって8%引き上げは14年に実施されたが…
(本間俊典=経済ジャーナリスト)
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