高齢者の就労を一段と加速させる政策が進んでいる。政府の「未来投資会議」で議長を務める安倍晋三首相が、「全世代型社会保障」制度の一環として65歳を過ぎた高齢者の就労機会の確保に向け、企業に70歳を目標にした継続雇用を求める法改正の方針を表明。労働人口の減少と年金財政のひっ迫を緩和する一石二鳥を狙ったものだが、人件費増につながりかねないことから、企業側は慎重だ。(報道局)
高齢者の就労延長については、2013年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、60歳を超えた労働者に対して企業に65歳までの雇用義務を段階的に課した。老齢年金の比例報酬部分の支給を60歳から3年刻みで1歳ずつ繰り上げるのに合わせて、企業の雇用義務を1歳ずつ引き上げた。この措置で「無年金、無収入」の事態を避けるのが目的だった。
雇用延長の方法は(1)定年年齢の引き上げ(2)定年制の廃止(3)定年後の継続雇用、の三つのうちから選択し、賃金規定などは企業側の方針に任せた。現場では人件費の増加を嫌う多くの企業が(3)を採用し、60歳定年の社員に退職金を支払っていったん退職させ、それ以降は「嘱託社員」として1年ごとの有期契約で、賃金を引き下げて雇用を続ける方式だ。
これによって、60歳以上の就労者は大きく増えた。改正法が雇用の継続を直接狙った「60~64歳」の男性有業者についてみると、17年度は約307万人で5年前の約365万人より60万人以上減少したが、有業率は逆に79.7%と5年前より7.2ポイント上昇した(総務省「就業構造基本調査」)。各世代の中でも最大級の伸び率だ。人数が減ったのは、12年度当時は「団塊の世代」がまだ大量に企業に残っていたが、17年度はこの世代がスッポリ抜けたため。
その分、65歳以上の就業者は急増しており、17年度は過去最多の約807万人と増加の一途だ(総務省「労働力調査」)=グラフ。景気拡大の長期化などで、労働市場は慢性的な人手不足が続いている中で、高齢者の就労増加が人手不足の緩和に一定の役割を果たしていることは間違いない。
今回の「70歳雇用」案はこの延長線上にあるもので…
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