多様な働き方、柔軟な働き方として、企業と労働者が雇用関係を結んで就労する一般的な形態のほかに、主業とは別な「副業」を持ったり、主副にかかわらず複数の企業の仕事をこなす「複業」が注目されている。しかし、日本は1社との雇用関係を前提にした就労が主流を占めていることから、本格的な普及はこれからだ。(報道局)
少し古いが、総務省が5年ごとに実施している「就業構造基本調査」によると、副業を希望している就業者は年々増えており、1992年当時は290万人、就業者に占める比率は4.4%。これが、20年後の2012年には各368万人、5.7%となり、希望者は80万人近く増えている。
しかし、実際に副業をしている人は逆に年々減り続けており、92年当時の346万人、5.3%から234万人、3.6%と100万人以上減少している。副業をしている所得階層は年収1000万円以上の余裕層と100万円未満の貧困層に二極化しており、企業側も85%が「本業がおろそかになる」といった理由で副業を認めてこなかった。
92年当時はバブル景気の余韻がまだ残っており、人手不足などからさまざまな副業が“黙認”されていたが、バブル崩壊後の長期不況で人手が過剰になり、さらに賃金の低下などで副業希望者は増えるものの、その機会は逆に減少してきた、というのが一連の流れだ。
一方で、人手不足が慢性化している現代は、そんな状況も変わりつつあるようだ。アデコがこのほど、副業・複業に関するサラリーマン(一般社員500人、管理職510人)の調査をしたところ、一般社員で副業・複業の経験者はまだ2割程度だが、副業・複業が主流になるかどうかについては8割以上が賛成。「収入を増やしたい」「空いた時間を活用したい」などをその理由に挙げている。
ところが、管理職に聞くと、副業・複業を禁止している企業が66%にのぼり、認めているのは2割程度=グラフ。条件つきなどで「認めた方がいい」と思っている管理職は8割以上にのぼっているものの、現実には社内にそうした制度がないうえ、長時間労働を助長したり、労働時間の管理が困難という懸念を持っていることがわかった。アデコは「日本企業は複業時代への変化に対して危機感が薄く、従来の働き方への固定観念から脱却できていない」と分析している。
そうした中、フリーランスや副業サラリーマンが増え、それを奨励する企業も少しずつ増えてきていることも間違いない。法律上は労働基準法で「1日8時間、週40時間」の規制はあるが、副業・複業自体の規制はなく、大多数は企業の就業規則で決められているため、拡大には就業規則の変更が必要になる。
就業規則の「兼業禁止」規定の変更を
このため、厚生労働省の有識者会議「柔軟な働き方に関する検討会」(座長、松村茂・日本テレワーク学会会長)は昨年12月、報告書を公表した。
その中で...
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