転職市場の隆盛が続いている。日本人材紹介事業協会がこのほど発表した2017年度下半期(17年10月~18年3月)の会員大手3社の転職紹介実績(速報値)によると、ホワイトカラーの転職紹介人数は過去最高の3万1070人となり、前期比1.2%増、前年同期比15.9%増。上半期に初の3万人の大台を突破したが、下半期はさらに伸びた。市場の活性化は雇用の流動化や働き方改革の加速につながるだけに、制度の充実が課題となっている。(報道局)
調査に協力しているのは、同協会会員企業のジェイ エイ シー リクルートメント、パーソルキャリア、リクルートキャリアの3社。転職市場は、08年のリーマン・ショックの影響で大幅に落ち込んだ09年度下半期(1万842人)を底に急速に回復し、ほぼ一貫して転職者数は増え続けている=グラフ。
17年下半期の場合、業界別(首都圏)では「コンシューマー(流通、小売り、サービスなど)」が7976人(前年同期比19.0%増)となったのをはじめ、「電機・機械・化学等製造」が5136人(同23.3%増)、「IT・通信」が4727人(同14.1%増)で、この3業界が全体の上昇をけん引する構図が続いている。一方、「金融」は1482人(同2.3%減)で、動きが鈍化している。銀行の店舗縮小の動きが背景にあるとみられる。
転職時の年代で最も多かったのは「26~30歳」の1万1186人(同16.2%増)。次いで「31~35歳」の6769人(同12.4%増)、「25歳以下」の5878人(同18.2%増)と若手が中心だが、「36~40歳」が3657人(同15.5%増)、「41歳以上」も3580人(同18.4%増)と大きく増え、全世代に広がっている。人材協では「若手はフリーターなどが正社員に転身、中年層は団塊ジュニアの年齢の高まりのため」と増加理由を推測している。
転職市場の活性化は企業の人材不足の裏返しでもあるが、リーマン・ショック前までは景気と雇用がリンクしており、景気拡大期には転職が増え、景気後退期には減るサイクルが繰り返された。しかし、リーマン以降は景気拡大の長期化と同時に、団塊の世代のリタイアや生産年齢人口の減少という構造要因が加わり、多くの企業が慢性的な人手不足に悩まされている。その分、転職希望者には追い風となる。
リクルートキャリアが発表した「転職時の賃金変動状況」によると、17年度の場合、前職より賃金が1割以上上昇した転職者の比率は29.7%で、02年度以降で最も高く、5年連続で上昇。今年1~3月期には30%を超えた。中でも「接客・販売・店長・コールセンター」などのコンシューマー分野では、13年度から30%以上の転職者が1割以上の賃金アップを獲得しており、「日本では転職は不利」という常識は次第に過去のものになりつつある。
“閉鎖市場”で生じる入社前後のギャップ
しかし、課題も少なくない。日本の転職市場がまだ十分整備されておらず...
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