4月27日に政府が発表した雇用関連統計では、2017年度の有効求人倍率が1.54倍、完全失業率が2.7%となった。求人倍率、失業率とも09年度の各0.45倍、5.2%から8年連続の改善=グラフ。就労人口も第2次安倍政権が発足した12年度当時から約100万人増えており、雇用情勢は堅調に推移しているように見える。しかし、その半面で大きな問題も抱えており、手放しの楽観は禁物だ。(報道局)
実はこの5年ほど、求職者数の減少と企業の求人数の増加が一貫して進んでおり、それが求人倍率の直線的な上昇となって表れている。厚生労働省によると、13年度の場合、月間求職者数約224万人に対して月間求人数は約218万人で、求人倍率は0.97倍だった。しかし、17年度には各177万人、273万人となり、求人倍率も1.54倍に上昇した。
しかも、求人倍率が毎年上昇している一方で、求職者とのマッチングは進まず、就職件数は13年度の約17万6000件から毎年減少し続け、17年度は14万3000件と4年間で3万件以上も減った。企業がいくら求人を出しても、求職者自体が減っているうえ、実際の就職に結びつくケースも減り続けていることになる。
その背景には、少子高齢化に伴う生産年齢人口(15~64歳)の減少がある。総務省によると、就労の中心となる生産年齢人口は1990年代半ばでピークアウトし、95年当時の8716万人から2015年には7592万人と1000万人以上も減少。今後も減少は進み、30年には7000万人を切ると予想されている。求職者の減少傾向は一時的な現象ではなく、構造的なものであり、生産性の低い業種の労働力確保が、今後はさらに困難になりそうな情勢だ。
職員の絶対数が足りない介護業界
その代表例が介護業界の人手不足。労働力調査では、今年3月時点の介護を含む「医療、福祉」の就業者は約799万人で、1000万人を超える「製造業」「卸売・小売業」に次ぐ大きな規模となっている。しかし、求職者数が増えないため、厚労省の産業別新規求人でも「医療、福祉」は最も多い約22万人と、やはり人手不足にあえぐ「卸売・小売業」の約15万人を大きく上回っている(いずれも3月時点)。介護の人手が集まらないため、高齢者施設の中には「空き部屋」が増えている所もある。
介護研修は盛んだが…
介護業界の人手不足については、給与水準の低さや夜勤などの長時間労働が大きな原因だが、基本的に介護保険制度に沿った「公定価格」で運営されていることから、事業者が努力しても容易に収益増加に結びつかない構造になっている。介護報酬は3年前の前回はマイナス改定された結果、事業廃止に追い込まれる事業所が増えたこともあり、18年度改定では0.54%のプラス改定となったが、この程度では「焼け石に水」との批判も多い。
介護のもう一つの問題は、他産業に比べてマンパワーに頼る仕事が多く、生産性が上がりにくいこと。高齢者の移動や入浴などを手伝う介護ロボットが実用化され、一部施設で試験導入されてはいるが、高額なコストがネックとなって普及は遅れている。また、介護保険以外のサービスと組み合わせた「混合介護」の拡大も期待されているが、現行制度下ではまだ大きな柱になっていない。
こうした介護業界の現状は、雇用が増えているにもかかわらず、賃金増に結びつかない典型的な例だが、生産性の高い成長分野に脱皮するには業界の自助努力と同時に、制度の大幅な改正が必要だ。その意味で、単純に「雇用は堅調」と言い切るには課題が多い。