企業などの障害者雇用義務が4月から強化された。改正障害者雇用促進法に基づき、法定雇用率が引き上げられたほか、対象に精神障害者を加えるなど、障害者の就労環境の拡大を図った政策だ。一定の周知・準備期間を設けたものの、受け入れる企業側には戸惑いも多く、官民による関連セミナーや講座などが活発に展開されている。(報道局)
今回の主要改正点は(1)企業の法定雇用率を2.0%から2.2%に引き上げ、今後3年以内にさらに2.3%に上げる。国や地方自治体は2.3%から2.5%、教育委員会は2.2%から2.4%に引き上げる、(2)対象に精神障害者(換算に5年間の特例措置あり)を加える、の2点。これにより、企業の場合は常用労働者50人に障害者1人だった割合が、45.5人について1人の雇用が必要になる。
雇用義務の強化を見越して、企業側の障害者雇用はほぼ一貫して増え続けている。2008年当時、雇用障害者は32万6000人、実雇用率は1.59%だったが、17年には各49万6000人、1.97%まで増えた。この10年で雇用者数は1.5倍、雇用率は0.38ポイント増えた=グラフ。
最新の17年の場合、障害別では身体障害者が33万3000人、知的障害者が11万2000人、精神障害者が5万人で、身体障害者が67%と3分の2を占めているが、精神障害者が前年より2割近く増えているのが大きな特徴だ。精神障害者の義務化は労働政策審議会が17年5月に答申しており、企業側はその前から早めに対応してきたことが数字に表れている。
しかし、身体、知的障害者に比べて、精神障害者の就労は仕事内容のミスマッチなどもあり、定着率が低いのが最大の課題となっている。高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査によると、17年時点で職場に1年いた定着率は知的障害者の68.0%、身体障害者の60.8%に対して、精神障害者は49.3%に過ぎず、約半数が入社1年未満で退職している実態が明らかになった。
一方、17年の障害者雇用を企業規模別にみると、従業員1000人以上の大企業の雇用比率は2.16%と2%を上回っているのに対して、1000人未満の企業では2%に達しておらず、50人以上~100人未満の企業では1.60%に過ぎない。企業規模が小さくなるほど、比率も低くなっている。
また、2%を達成した企業の比率は50.0%で、初めて半数に達したものの、残る半分の企業は未達成で、その数は4万5471社。そのうち障害者を1人も雇用していない企業は58.7%にあたる2万6692社に上った。未達成企業に対しては「納付金」名目の罰金を課し、達成企業に「調整金」として支給しているが、厚労省は「雇用を増やしてもらうのが第一」との基本方針を継続している。
職場の「サポーター」養成がカギ
障害者雇用に対して、企業側は障害者が就労しやすいように「合理的配慮」をする努力義務があるが、多くの企業が課題として挙げるのは「担当業務の創出」「社内の理解促進」「入社後の指導・定着にあたる指導員の育成」の3点だ。とりわけ、精神障害者については職場の理解の有無が決定的な要因になりがちで、細かくフォローする「サポーター」の存在がカギを握っている。
このため、厚労省は昨年秋から、ハローワークの専門家が企業に出向き、担当者らにノウハウを伝える「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開始、2時間程度の講座で基本的なサポートができるような研修を重ねている。また、障害者雇用の多い企業が集中する東京都は「職場内障害者サポーター事業」を人材大手のパソナグループに委託し、12時間の講座でサポーター資格を得られるカリキュラムを組んで人材養成を進めており=写真、これまで600人以上が登録を済ませている。こうした取り組みが軌道に乗れば、障害者雇用の一層の拡大と戦力化につながると期待も大きい。