スペシャルコンテンツ記事一覧へ

2018年1月 8日

安倍首相が掲げる「働き方改革国会」と憲法改正発議の動き

旧民主系野党の"結集"は展望開けず

 安倍晋三首相は22日召集の通常国会を「働き方改革国会」と名付け、関連法案の提出と成立に意欲を見せる。また、自民党総裁として憲法改正の発議に向けた動きを加速させる構えだ。安倍政権にとっては6度目、昨秋の総選挙後では初めてとなる通常国会。今年は地に足の着いた熟議の国会となるのか。開会を前に与野党の現有勢力や衆参の厚生労働委員会の構成などを整理する。(報道局)

is160919.JPG 労働基準法や労働者派遣法など8本の改正法案を束ねた「働き方改革関連法案」は、昨秋の解散総選挙に伴い国会提出が先送りとなったままだ。当初、政府が見込んでいた昨年12月中の成立は宙に浮き、最短でも今夏以降との見方が強まっている。こうした流れを受け、4日の年頭会見で安倍首相は「通常国会は働き方改革国会だ。子育て、介護などそれぞれの事情に応じた多様な働き方を可能にし、一億総活躍の社会を実現する」と強調した。

 さらに、「未来は変えることができる。正規、非正規、雇用形態に関わらず、昇給や研修、福利厚生など不合理な待遇差を是正することで、多様な働き方を自由に選択できるようにする」と明言。「長時間労働の上限規制を導入し、長時間労働の慣行を断ち切る。ワークライフバランスを確保し、誰もが働きやすい環境を整えたい。(制定から)70年におよぶ労働基準法において、歴史的な大改革に挑戦する」と意気込んだ。首相自らの判断で冒頭解散した昨年9月の臨時国会前にも同様の発言をしており、年頭会見で仕切り直した格好だ。

衆院、与党の自公で「3分の2」を超える312

 「働き方改革関連法案」の審議の行方と同様、今年は憲法改正に向けた動きも注目される。このため、「過半数」ではなく、憲法改正の国会発議に必要な「3分の2」という数字が大きな焦点となる。安倍首相は「新しい時代への希望を生み出すような、憲法のあるべき姿をしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論をいっそう深めていく。自民党総裁として、そのような1年にしたい」と、強い意欲を示している。

 そうした視点を踏まえ現有の衆参の勢力を見てみると、衆院は定数465、「3分の2」は310。与党の自民283、公明29で計312。野党は旧民主系の立憲民主54、希望51。共産12、日本維新の会11、正副議長を含むその他が25となっている。

 参院は定数242、「3分の2」は162。与党の自民(こころ)125、公明25で計150。野党は、旧民主系の民進47、希望3。共産14、日本維新の会11、正副議長を含むその他が17。与党で「3分の2」を占めていないが、憲法改正の議論は否定しない維新と希望の動き次第で情勢は変化する。

 政策である「働き方改革関連法案」と、国家の基軸を成す「憲法の改正発議」は次元の異なるものだが、通常国会の最終盤まで注目を集める「2大テーマ」となる。こうした背景もあって、旧民主系野党による統一会派の有無に視線が注がれているが、立憲民主は「衆院選前に終わった話。巻き込まないでほしい」(枝野幸男代表)と選挙結果重視の姿勢。希望と民進が狙う“結集”は展望が開けていない。

厚労委は与党が多数、委員に厚労相経験者2人も

 政府が通常国会に「働き方改革関連法案」を提出すれば、本会議から実質審議の付託を受ける厚生労働委員会。与野党の構成を見てみると、衆院厚労委は定員45のうち、自民28、公明3(与党計31)。野党は立憲6、希望5人、旧民進の無所属1、共産1、維新1となっている。委員長は自民の高鳥修一氏。

 与党の委員には、厚労相経験者の田村憲久氏と塩崎恭久氏が名を連ねているほか、発信力のある小泉進次郎氏をはじめ、後藤田正純氏、橋本岳氏、穴見陽一氏らが務める。野党では、厚労副大臣経験者で立憲の西村智奈美氏、同政務官経験者で希望の山井和則氏らが入っている。

 参院厚労委は定員25のうち、自民13、公明3(与党計16)、野党は民進5、維新1、希望の会1、無所属クラブ1、共産1。委員長は自民の島村大氏。希望の会は「自由党と社民党」が一昨年の夏に参院でつくった統一会派で、厚労委の委員は福島瑞穂氏。衆参ともに、与党が多数を占めている。

 

【関連記事】
通常国会の「働き方改革関連法案」、重要広範議案に指定へ
法案修正と会期延長の有無が焦点、施行期日に影響(1月1日)


 

PAGETOP