日本人材派遣協会がこのほど発表した2017年第3四半期(7~9月)の派遣事業統計調査(521事業所)によると、派遣社員の実稼働者数は平均34万3857人(前年同期比8.1%増)となり、13年第3四半期から17四半期連続で前年同期を上回った=グラフ。有効求人倍率が1.52倍という43年ぶりの高水準にある中、企業の求人意欲は正規、非正規ともに旺盛。こうした全体的な流れに派遣需要も連動して伸びている。(報道局)
統計調査を開始した08年の実稼働者数の年間平均は43万161人だったが、その後、リーマン・ショック(08年)や従来までの行政指導の解釈を事実上“変えた”「専門26業務派遣適正化プラン」(10年)、東日本大震災(11年)などの影響と煽りを大きく受け、13年第2四半期には27万人台にまで大幅に激減。その後は、緩やかながらも持続的な景気回復に後押しされる格好で徐々に持ち直してきている。
加えて、派遣社員の段階的・体系的なキャリアアップや雇用安定化措置などを派遣元事業主に義務化した労働者派遣法の改正(15年9月)もあって、生活スタイルに合わせた働く側からみた環境整備の充実も、上昇傾向の要因のひとつとなっている模様だ。17年の年間平均は、08年当時には大きく及ばないものの、09年当時の35万人台付近まで持ち直す見通しだ。今後は、現行法における短期の派遣(日雇い)の世帯年収要件などの抜本的な見直しも、政府の副業・兼業を推進する観点から課題となりそうだ。
今回発表された17年第3四半期の詳細をみると、業務別では、大きな割合を占める「一般事務」が11万4275人(同2.6%増)、「機器操作」が7万1643人(同3.5%増)、「財務」が1万4573人(同5.4%減)、「製造」が1万1188人(同15.9%増)となっている。比較的割合が小さい「情報処理システム開発」は8281人(同32.8%増)、「貿易」が7033人(同5.0%増)、「営業」は4004人(同15.5%増)、「販売」が5876人(同3.6%減)、「軽作業」は7987人(同3.0%減)だった。
「情報処理システム開発」「製造」「営業」の3業務が10%以上伸び、「一般事務」と「機器操作」は堅調。一方で、「財務」「販売」「軽作業」が前年同期を下回った。
派遣先に正社員や契約社員などで直接雇用されることを予定した上で、一定期間派遣社員として就業する仕組みの「紹介予定派遣」は、15年第3四半期から減少の一途をたどっている。派遣をきっかけに正社員・契約社員を希望する人とスキルを見定めたい企業の「中間的機能」を担ってきた紹介予定派遣だが、深刻な人手不足にある中で、企業側は紹介予定を活用せずに採用に動き出している傾向が見られる。稼働者は5455人(同9.0%減)。派遣先企業に正社員・契約社員として雇用される成約件数も2466件(同16.3%減)と減少している。
短期派遣の「日雇い労働者」は11万5668人(同32.3%増)となり、統計調査開始以来、初めて11万人を超えた。17年の年間平均は2年連続で前年を上回るとみられる。
「北海道」「北関東・甲信」「北陸」「東海」「近畿」が好調
調査では全国を10ブロックに分けて地域別の動向を取りまとめている。実稼働者数全体の上昇を裏付けるように、17年に入ってからの四半期統計では全10ブロックで前年同期を上回っている。中でも、今回の第3四半期では「北海道」「北関東・甲信」「北陸」「東海」「近畿」の5ブロックが、2ケタの増加で好調ぶりが際立っている。
稼働数最大の「南関東」は13年第3四半期から堅調な増加が続き、実稼働者数は18万9488人で前年同期から約1万2000人増えた。
「南関東」は埼玉、千葉、東京、神奈川の4都県。「近畿」は滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の6府県で集計している。