来春卒業の大学生の就職活動は、6月1日から企業側の選考面接が解禁されたが、事前の予想通り、内定率は7月末までの2カ月間で80%を超えている模様だ。学生側の超売り手市場となっており、新卒採用計画を達成できるかどうか、企業側の焦りは高まっている。(報道局)
リクルートキャリアによると、7月1日時点の内定率は78.6%(前年同期比7.5ポイント増)。ディスコでも内定率は83.2%(同3.4ポイント増)。マイナビも6月末時点で73.3%(同8.0ポイント増)とほぼ同じ傾向をみせており、昨年のペースを大きく上回っている。このペースで行けば、7月末までに各社の内定率が軒並み80%を超すことは確実で、今年の就職戦線は大きなヤマ場を越え、当初予想された「短期決戦」となったようにみえる。
ところが、学生側、企業側とも、「短期決戦」には首を傾げる。学生にとって、内定をもらった企業は“滑り止め”であり、“本命”企業の内定を得るため、引き続き就職活動中というケースも少なくない。このため、企業側にとっては採用計画が順当に進まず、不足数をどうするか頭の痛い局面が続いているからだ。
学生側の超売り手市場だが……
就職情報各社の調査を総合すると、企業の内定を得た学生のうち、その企業に就職する予定で就活を終えた学生は7割前後で、残る3割は就活を継続中だ。このため、内定者を引き留めるため、企業側の「就活を終わらせるハラスメント(オワハラ)」が横行している模様で、社会的批判を受けている。昨年、文部科学省が実施した調査では、6月の選考解禁時に、すでに4割の大学で学生からオワハラの相談を受けていた。今年は昨年以上に採用競争が過熱しているため、オワハラも過熱、巧妙化している可能性が高い。
求人広告のアイデムによる企業の担当者アンケートによると、7月1日時点の内定者数(辞退者を除く)が予定人数に達しているかどうかという「内定充足率」を聞いたところ、充足率が80%以上の企業は3割弱に過ぎず、前年の4割強から12ポイント近く減少している。残る7割以上の企業は採用予定数をかなり下回っていて、前年よりも内定者の確保が難しくなっていることを示している。
学生側にとって有利な状況には違いないものの、企業側にとっては内定辞退者の“歩留まり”をどこまで減らせるかが勝負どころ。希望する人材の質を下げても予定数を確保するか、あくまで人材の質は下げず、中途採用や非正規社員からの昇格なども含めて計画を達成するか、悩ましい選択を迫られているのが実情だ。
内定辞退「5割以上」の企業も
マイナビの6月中旬時点の企業調査によると、内定辞退率が「1割以下」の企業は45%、「2~4割」は40%あり、「5割以上」の企業も16%あった。このため、追加の選考機会を設ける企業も62%にのぼり、短期決戦どころか、逆に採用活動が長期化している企業も多いとみられる。
今年は採用ルールを定めている経団連傘下の企業の間でも、なりふりかまわぬ採用の前倒しがまん延している実態がかなり明白になっており、「日程ルールの形骸化が進んでいる」との批判がさらに強まるとみられる。その背景となっている日本独自の「新卒一括採用」方式のほころびが目立ち、経団連を中心とする企業側にとっては根本的な政策転換が必須の情勢になっている。