有期契約の労働者が通算5年勤務すれば無期雇用に転換できる「無期転換ルール」が来年4月から実施される。有期で働く人たちにとっては「雇用の不安定」を解消できる大きな救済策のはずだが、なぜか関心がいまひとつ高まっていない。背景には、構造的な人手不足による売り手市場の長期化が、雇用不安を緩和している現状がありそうだ。(報道局)
「無期転換ルール」は2012年8月に成立し、翌13年4月に施行された改正労働契約法で、解雇権の濫用法理の明文化などとともに定められた。同一企業で契約更新を繰り返し、通算5年以上の勤務実績のある労働者なら、無期契約に転換する権利を得られる。申請すれば企業側は拒否できない。
雇用不安は遠のいて……
対象となるのはパート、アルバイト、契約、派遣などで、13年4月以降の契約から適用される。無期転換にあたっては、(1)非正規の場合、契約と契約の間が6カ月以上空くと(クーリング期間)、前の契約期間は算定されない(2)無期転換後の就労形態や賃金などの処遇は企業に任され、企業はあらかじめ就労規則などで規定を設けておく(3)来年4月の実施が近づくと、企業側が契約を打ち切る「雇い止め」が多発する懸念があるため、労働局が監視を強める――などの重要なポイントがある。
最短で来年の18年4月から権利行使できる労働者が出てくるため、厚生労働省が中心となって専用ポータルサイトを立ち上げたり、全国労働局などを通じてセミナーを開いたりするなど、本腰を入れて企業と労働者の双方に制度の周知徹底を図っている。
しかし、連合が今月20日発表した「有期契約労働者に関する調査報告」では意外な結果が出た。調査は4月下旬、全国の20~59歳の有期契約労働者1000人の回答をまとめたもの。それによると、無期転換ルールについて、「ルールができたことを知らなかった」とする回答が過半数の51.2%に上り、「ルールができたことは知っているが、内容までは知らなかった」が32.9%。両者を合わせると「知らなかった」人の割合が84.1%に上った。「ルールの内容まで知っていた」人はわずか15.9%に過ぎず、当事者の関心の低さをうかがわせた。
さらに、ルールに対する労働者自身の考えも...
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【有期契約労働者の無期転換ポータルサイト】