厚生労働省の有識者会議「透明かつ公正な労働紛争解決システムの在り方に関する検討会」(荒木尚志座長)は5月29日、第20回会合で報告書をまとめて議論を終えた=写真。2015年10月から検討を始めて1年半という、異例のロングラン検討会。しかも、中心議題となった「解雇無効時の金銭救済の制度化」については激しい賛否が交わされ、問題の根深さを浮き彫りにする形となった。報告書を受けて、制度化の議論は労働政策審議会に舞台を移すが、今のところ実現するかどうかの見通しは立っていない。(報道局)
「解雇無効時の金銭救済」とは、会社による社員の解雇が裁判で無効と判断された場合、社員は職場に戻る権利を得るが、感情的なシコリなどから、金銭(労働契約解消金)を受け取って会社と和解し、退職するもの。現在、ほとんどがこの方法で決着しているが、多くの問題も抱えている。
一つは、解雇の有効・無効の判決が出るまで、通常は1年以上の長い時間が掛かるうえ、解雇理由もケースバイケースであることから、同様な訴訟の参考になりにくく、解消金データも公開されないため、透明性を欠くという重大な欠陥があることだ。
もう一つは、訴訟中の生活費や弁護士費用などが必要になるため、訴訟で決着を図れる社員は有力労組をバックにした大企業の正社員に事実上限られ...
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