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2016年12月19日

「女性の活躍推進」にならない?

育休取得期間、2年に延長へ

 育児休業の取得期間が、現行の最長1年半から2年に延長されることになった。1年半では保育園に入れない子供が出て来る「待機児童問題」の解消がむずかしく、女性の復職の壁になるというのが理由だが、延長には「女性の活躍推進に逆行する」との異論も根強く、壁が低くなる保障はない。(報道局)

 現行の育休は子供が生まれて1歳になるまでの1年間取得できるが、保育園などへの入所は通常は毎年4月。このため、生まれた月によっては子供が1歳になっても保育園の募集時期と合わないケースが出て来るため、半年の延長が認められている。しかし、次の募集でも入所できないケースがあることから、再延長に踏み切るものだ。厚生労働省によると、全国の市区町村のうち、東京などの都市部を中心に、2割ほどの自治体で約2万7000人程度いる待機児童が対象になるとみられる。

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保育所を増やしても追い付かない

 今回の再延長は、政府が8月に閣議決定した「未来への投資を実現する経済対策」の柱の一つである「一億総活躍社会の実現」を加速するため、「子育て・介護の環境整備」に盛られた政策。これを受けて、厚生労働省は労働政策審議会の雇用均等分科会を9月に招集し、6回にわたって議論を重ね、今月12日に建議にこぎつけた。厚労省は当初から、再延長期間を半年延ばして「2年」とする考えだったようだ。来年の通常国会での法改正と2017年度中の施行を目指す。

 ところが、分科会の雰囲気は経営者、労働者、有識者(公益)の3者委員ともかなり否定的だった。労政審の審議は労使の主張が相容れず、公益委員の“仲裁”で決着するのが普通だが、その意味で今回は珍しい展開となった。なによりも、3月に改正育児・介護休業法が成立し、来年1月から施行されるため、「まずは施行状況を見てから議論する方が有益」というもっともな理由があった。

 加えて、現実的な理由が二つ。一つは「子育て・介護の環境整備」の中に、育休延長とともに盛り込まれた「50万人分の受け皿を前倒し整備する」という保育所の整備が先決ではないかという主張だ。複数の委員から「保育所整備が間に合わないから、育休延長でしのげということではないのか」という本質を突く意見が出た。

 もう一つは、育休期間が長引くほど復職が困難になるという日本特有の職場環境がある。実際、現行制度の下では1年半の育休を取ったまま、そのまま離職する女性も1割程度ある。自分自身や子供の健康状態、夫との育児分担ができないなど、理由はさまざまだが、現代の職場は業務内容や人間関係の変化が早く、休業中の女性は心理的に焦りが生じがちだ。「期間延長より、復職できる時点で子供を預けられる保育所が欲しい」というのが本音に近い。

あくまで「緊急的セーフティーネット」だが

 このため、建議も再延長については「緊急的なセーフティーネット」と位置づけ、「例外中の例外」であることをくどいほど強調しているが、都市部の保育所整備は対象地が限られるうえ、周辺住民の反対などもあって思うように進まないのも事実。先行き不透明な情勢に、「行政の“言い訳”に使われる懸念が残る」ともらす委員もいた。

 今回の再延長は「限定された」テーマだが、これだけでは女性の活躍推進が進まず、場合によっては逆行させる可能性もある。もっと重要な長時間労働の是正、男性の育児参画といった肝心な課題があるが、いずれも同分科会の扱う主要テーマになり得ず、他の審議会や政府が新設した「働き方改革実現会議」でも本格的な議論には入っていない。「待機児童ゼロ」への道は険しい。

 

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