7月10日に投開票が行われた第24回参議院議員選挙(半数改選)で、与党の自民・公明が改選定数121の過半数を大きく上回る議席を獲得した。32ある1人区のすべてで、おおさか維新を除く複数の野党が「統一候補」を立てた“特異”な選挙戦であったことを踏まえると、与党は「野党連合」に“圧勝”したとも言える。選挙結果を念頭に、下半期の国政の日程感と、注目される労働基準法改正案と新法となる外国人技能実習適正実施法案の行方を展望する。(報道局)
5日前後の臨時国会の後、9月下旬にも本格的な秋の臨時国会へ
今回の結果を政党・政治団体別に見ると、野党第一党の民進が大きく後退したことが際立つ。もちろん、それぞれ個別の政党・政治団体の躍進や退潮の動向も見逃せないが、事実上、3年半前まで政権を担っていた政党で、かつ最盛期の勢力(議席数)などを考えると、その衰退のスピードは著しい。
さて、今後の国政の流れはどのようになるのか。国政選挙で“及第点”を得た政府・与党は、国政選挙後に開く5日間前後の臨時国会(衆院の場合は特別国会)を8月初旬までに終えたい意向だ。8月下旬から9月初旬に開かれるアフリカ開発会議(ケニアで開催)や安倍晋三首相のロシア訪問、20カ国・地域首脳会議(G20:中国・杭州で開催)などを挟み、秋の臨時国会は9月下旬に召集する見通しだ。
前回2013年の参院選(7月21日投開票)の後は、同年8月2日から6日間の臨時国会、そして、10月15日から55日間(会期延長含む)の日程と幅で秋の臨時国会に臨んでいる。今回の秋の臨時国会の召集は前回より早めになる模様。内閣改造は8月初旬までか、あるいは9月中旬となる見方が支配的だ。
ただし、現閣僚の約7割が昨年10月に任命されて1年も経過しておらず、国会も150日間で延長なしの先の通常国会だけしか対応していないため、小幅の改造または空席ポスト(参院選で現職大臣が落選した席)の補充程度となる公算が高い。一方で、東京都知事選の経過や結果も影響して、与党内から大幅改造を求める声が高まる可能性もあり、安倍首相の判断が注目される。
継続審議の労基法改正案と外国人技能実習法案の行方
雇用・労働に関連する法案では、労基法改正案の取り扱いが注視される。与野党対決法案のひとつで、昨年の通常国会と今年の通常国会の2国会にわたり「審議入り」すらできず、未着手のまま継続審議を繰り返している。
労基法改正案は、(1)労働時間でなく成果で評価される「高度プロフェッショナル制度(高度プロ制度)」の創設だけにとどまらず、(2)フレックスタイム制の清算期間を現在の1カ月から3カ月に延長、(3)裁量労働制の対象となる企画業務型に、法人向けの課題解決型提案営業などを加える、(4)年次有給休暇が10日以上ある労働者の場合、5日は企業側が時季指定、(5)中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の廃止――などが盛り込まれている。
これには、労使双方からそれぞれ異なる部分で反対と懸念が強い。3国会目となる秋の臨時国会で政府は、大幅な修正か、場合によっては「取り下げ、修正して出し直し」の検討に入ることもあり得る。例え、昨年3月に通常国会に提出した政府案のまま審議を始めたとしても、最大でも60日前後の秋の臨時国会で衆院と参院の審議を経て成立させるのは容易でない。国会が召集される前の8月から9月中旬にかけて行われる、政府と与党・政務調査会による同法案の取り扱い協議がカギとなる。
また、法務委員会を議論の舞台とする厚労省と法務省共管の「外国人技能実習適正実施法案」は、現行制度を抜本的に見直す新法として、先の通常国会の衆院法務委員会で既に23時間以上の審議を重ねている。秋の臨時国会が始まると、採決の段取りを加速させて可決。参院の審議に委ね、政府は年内成立を目指す。
本来、この法案は外国人実習生の現状のあり方に世界各国から批判を浴びる運用が一部に見られている状況を打開する狙いがあり、政府が昨年中に成立させる意気込みで法案提出していた。同法案の特徴は、認可法人の 外国人技能実習機構(仮称) を新たに創設し、「管理監督体制の 強化」と「制度拡充」と いう両面を進める内容。この法案の行方にも注目が集まる。