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2016年5月23日

人材サービス企業の3月期決算を読む

人材不足を反映、好業績相次ぐ

 人材サービス企業の2016年3月期決算がほぼ出そろい=表、各社とも基本的には増収増益の好結果となっている。同業界は大手が外資系や非上場企業が並び、経営内容を公開しない企業が少なくないことから、「全容がわかりにくい」との指摘もある。それでも、3月期決算企業だけに焦点を当てて内容を掘り下げてみると、業界共通の現状や課題が浮かび上がって来る。(報道局)

is160523.png リクルートホールディングス(HD)はダントツの売上高を誇るが、もともとは同社にとって“副業”に近かった人材派遣部門が、この数年の国内外の相次ぐM&Aによって急成長した。派遣の売上高は8900億円(前期比31.8%増)に達する。そのうち、国内(スタッフサービスとリクルートスタッフィングの合計)は4141億円(同6.3%増)にとどまったが、海外では米豪などの有力派遣会社を買収した効果などで4758億円(同66.6%増)に急増した。

 今回は買収に伴うのれん償却コストなどがかさんで減益となったが、峰岸真澄社長は「積極的な海外M&Aを加速させる」と公言しており、今後もこの方針に変化はない。とりわけ、世界最大の求人サイト「インディード」の買収効果に対する期待を強めている。売り上げ規模で見る限り、アデコやランスタッド、マンパワーなど欧米3社に次ぐ「世界企業」の地位をさらに上げる構えだ。

 テンプHDは昨年のパナソニック・エクセルスタッフなど2社の大型買収が奏功して、過去最高の増収増益を記録した。派遣部門の売上高は4018億円(同35.8%増)となり、リクルートの国内2社の合算と肩を並べる規模に成長した。海外は米ケリー・サービスと組み、また、大きな市場拡大が見込める東南アジアを主軸にする展開で、同社特有の堅実ビジネスを維持する方針だ。

 事務系派遣が中心の2社以上に好調だったのが技術者派遣、製造派遣・請負だ。正社員のエンジニア派遣のメイテックは年間を通じて98%を超える技術者のフル稼働が続き、売上高がついに878億円の過去最高に上った。自動車メーカーなどからの引き合いが活発で、派遣単価の高いコア技術者の稼働率が高いことから、営業利益率(営業利益を売上高で割った数値)は派遣業界ではトップクラス。

 nms(日本マニュファクチャリングサービス)、UTグループも二ケタ台の増収増益を達成しており、内外メーカーの開発意欲が旺盛な様子を反映している。WDBは理学系研究者のスキルアップに向けた研修施設の拡充など、研究職派遣に特化した戦略が奏功している。

人材確保は年々困難になるばかり

 一見好調な人材サービス事業だが、課題も多い。その一つが、人口減少による人手不足に伴って、人材確保が年々困難になっている点だ。多くの企業が人手確保のため、女性に力を入れた就労促進策を講じる一方、「コアとなる正社員」以外の人材は外部活用の流れに向かっている。コールセンターなど部署全体を派遣会社にアウトソーシングするケースも増えており、その分、派遣会社側も人員確保の必要に迫られている。

 テンプHDの水田正道社長は「例年なら3月は派遣契約の更改が集中するが、今年は4月の落ち込みは少なかった。派遣先企業の人材活用の潮目が変わったのか、“働き方改革”が浸透している印象を受ける」と述べ、多くの企業にとって派遣が「臨時的・一時的業務」を超えた人材戦略に組み込まれていることを示唆している。

 しかし、均質な技術水準を持つ人員が多く必要な製造派遣・請負会社にとって、人材確保は最も頭の痛い課題となっており、nmsは「若手現場社員のスキルアップや生産性の向上を通じて技術水準を維持する」としているものの、人材獲得の困難さも認識している。これは製造派遣・請負業界の共通課題であり、社員の能力アップに努める一方、賃金アップに向けたメーカーとの交渉力も問われることになりそうだ。

 また、昨年9月に施行された改正労働者派遣法では、「教育訓練」が派遣会社に義務化されたが、「一定数の無期雇用化」の対応も含めて、今回の決算にはまだ反映されていない。今後の人材サービス企業の動向が注目される。

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