4月29日に東京・代々木公園で開かれた連合の第87回メーデー中央大会。毎年、約4万人(主催者発表)が集う恒例行事だが、通常国会も終盤を迎え、7月投開票の参院選(半数改選)を意識した発言が登壇者から相次いだ。昨年10月に連合組織のトップに就任し初めてのメーデーとなった主催の神津里季生会長。政府代表として招待され、2年連続で出席した塩崎恭久厚労相。そして、連合の明確な支持政党だった民主党から民進党に“衣替え”して初登壇となった岡田克也代表。国政選挙の告示まで残り2カ月を切っているだけに、それぞれの「狙いや思惑」、「この3者が公に会した時の微妙なスタンス」などを浮き彫りにするため、主要な部分を忠実に記録した。(報道局)
神津会長 「非正規への積極的配分はかつてない成果」(約12分)
(連合全体の活動)
今年のメーデーのスローガンは「支え合い、助け合い、心をひとつに、力を合わせ、暮らしの底上げを実現しよう」です。メーデーの起源は、19世紀のアメリカにおける8時間労働要求運動です。わが国では1920年に東京・上野で第1回が開催され、以来、多くの先輩たちが働く者の自由と権利、明日への希望、世界の平和を求める思いをつないできました。そのもとで、今日(こんにち)の状況を見渡した時に、改めて危機感を持たざるを得ません。
失業率については見かけでは改善していますが、その中身は不安定雇用、低所得の非正規雇用の増加です。これを放置すれば、格差・貧困がさらに広がり、働く者が分断され、ひいては社会の底割れを招きかねない。これが現状です。
連合は今年の春季生活闘争は、底上げしようと重ねて主張してきました。そのことに、連合はそれぞれの組織、多くの仲間が呼応してくれました。足元、物価上昇がほとんどない、あるいはマイナスという中で、そういった中にもかかわらず、底上げ、明確に新たな傾向、新たな成果を生み出しつつある。それぞれの組織の皆さんの努力の成果が今日(こんにち)のこの状況に結びついていると思います。
中小のキャッチアップや、あるいは非正規で働く仲間への積極的な配分は、これまでにない成果です。このことをさらに地域に広げ、最後の1組合まで徹底して交渉を支援していこうではありませんか。
(政治状況への認識)
一方では足元の経済状況、金融緩和に依存したアベノミクスの限界というものも明らかになってきています。トリクルダウンだのみの非正規や中小企業、地域に経済の好循環は行きとどきません。政府は底上げにもっと光をあてて、格差是正に真剣に取り組んでいただきたい。
またこのところ、政府与党からは労働時間の規制緩和については先送りされていますが、最低賃金の引き上げ、同一労働同一賃金、奨学金、保育士や介護士の処遇、こういった課題の検討を目立たせているところです。国の根幹を支えているのは私たち労働者であり、労働、このことの大切さにようやく政府与党の皆さんにも、気付いていただけたのでしょうか。
私たち連合は、政策の中身には是々非々で対応します。いい政策であればぜひとも政府に実現していただきたい。しかしながら、間違っても7月の参院選が過ぎた途端に、態度が変わるというようなことがあってはなりません。そうならないように私たち連合もそれぞれに連携し力を合わせて、できるかぎり釘を刺していく所存です。そしてまた見方を変えるならば、こうした足元の政府与党の動きは、野党や世論のプレッシャーは大きければ大きいほどいい、そのことを指し示すものでもあります。
いずれにしても社会の底割れを防ぐためには、暮らしの底上げによって、働く者の将来への希望を確かなものにすべく発信、行動をしていくことが重要です。その意味でも来る7月の参院選はきわめて重要な戦いです。これまでも労働者派遣法や安全保障関連法を巡る国会運営に端的に表れてきたように、一強政治の中で丁寧な合意形成、この姿が失われているのではないか。そう言わざるを得ません。雇用と暮らしの安心、健全な民主主義を求めるもう一方の受け皿が求められています。
そのためにも民進党には目先の人気取りに陥ることなく、社会の持続可能性に対する責任ある政策軸を示し、行動することで国民の期待に応えていただきたいと思います。そして私たち連合は普通の国民、普通の市民の感覚と目線において、政治に正面から真摯に向き合っていく、このことの重要性を組織の内外に渡って訴え続けなければなりません。そのうえでそうした営みをバネ力(ぢから)に変えながら、働く者の代表である比例区組織内12候補の勝利をはじめ、推薦候補の勝利につなげていかなければなりません。
塩崎厚労相「成長と分配の好循環を実現へ」(約10分)
安倍政権では経済再生最優先、雇用最優先、デフレからの脱却、そして日本経済再生に取り組んで、働く場を増やすことに全力を傾けてきました。今年の春闘も労使間で真摯な議論が行われ、多くの企業で3年連続のベアを実現しました。一部の産業分野では中小企業の賃上げ水準が大手を上回り、非正規で働く方の賃上げ率が正規を上回るという動きもあります。今後も好調な企業収益を踏まえた賃上げを実現し、その流れが中小企業や非正規雇用の皆さんにも届くように我々も力を入れていきたいと思います。最低賃金の引き上げに関しても経済の好循環を達成する観点から重要です。
我が国は主要先進国の中で人口減少、労働人口の減少、高齢化、少子化のいずれの項目もそろって極めて厳しい状態である先進7カ国中唯一の国です。容易には解決しがたい人口問題に直面しており、どのようにして乗り越えるのか、活力ある経済社会を維持していくのか、世界が固唾をのんで注目していることがひしひしと感じられます。安倍内閣は歴代内閣で初めてこの人口問題に正面から取り組む、構造問題に正面から取り組むという覚悟で臨んでいます。
「働き方改革」は安倍内閣の次の3年間の最大のチャレンジです。特に長時間労働の削減、同一労働同一賃金の実現による非正規で働く方の待遇改善、高齢者の活躍促進の3点を安倍内閣として確実に進めます。
第一に長時間労働の削減に向けては継続審議となっている労働時間法制改革ともいうべき、労働基準法等の改革、改正法案の早期成立に努めるとともに、この4月から長時間労働の重点監督対象について、月残業100時間超から80時間超に拡大をして取り組みの強化をしていきます。
第二に同一労働同一賃金の実現です。非正規で働く方の待遇改善を進め、多様で柔軟な働き方の選択肢を広げるためにも極めて重要な課題です。現在、有識者会議でさまざまな検討をしており、ガイドラインの策定と法改正の準備を進めています。
第三に働きたいと願う高齢者の皆さまの希望を叶えるためにも、さらなる定年の延長や、65歳以降の雇用継続を行う企業に対する支援、環境整備を行うとともに、企業における高齢者の再就職の受け入れも促進したいと思っております。
国民や企業の将来不安を払しょくして、成長と分配の好循環を実現するためにも、安定的な財源を確保しつつ、社会保障制度の改革を大胆かつ着実に進めてまいります。本格的な日本経済と暮らしの再生には健全な労使関係の構築を基礎とし、すべての国民が心をひとつにし、さまざまな難局を乗り越える必要があります。厚生労働行政が直面している多くの重要問題についても、労使の皆さんのご意見をしっかりと伺い、十分に議論を重ねつつ解決に向けて努力してまいります。
民進・岡田代表「民進党のスタートに理解と支援を」(約5分30秒)
民進党代表として初めてごあいさつします。今まで民主党を支えていただいた皆さん、本当にありがとうございました。厳しい時も苦しい時も民主党を支えていただいた連合の皆さんに心からお礼を申し上げます。
そして、なぜ今民主党から民進党なのか。そういった声もいただきます。巨大与党である自民党、公明党、そして安倍政治。その暴走を止めるために私たちは一歩前に出なければならないと考えました。国政選挙で2012年以来、私たちは衆議院選挙、参議院選挙、衆議院選挙、3つの選挙で結果を出すことができませんでした。しかし、それは安倍政治が国民に支持された結果ではありません。安倍政権の得票は増えてはおりません。野党が分裂した結果として、安倍政治の独走を許してきました。だからこそ、同じような考え方を持った政党であればひとつになって、政権交代可能な政治を実現していく。そういう思いを持って民進党がスタートしたことをご理解ください。そしてご支援いただきたいと思います。
先ほど、塩崎大臣が同一労働同一賃金、長時間労働の規制、昨年のさまざまな国会答弁を知っている私にとって驚くべき変化であります。本当なら支持したい、一緒にやりたいと思います。問題はその中身です。そこはしっかりと見極めていかなければなりません。
例えば長時間労働をしっかり規制していくと言われますけど、それならまず、裁量労働制を幅広く認めた労基法をまず、その修正を撤回して出し直すことが先だと思います。しっかり中身を見極めて、そして、いいものはいい、しかし口だけで言っているなら、強く反対していかなければならないと思います。
目の前にある参議院選挙、格差の拡大するこの世界の中で日本も例外ではありません。格差の少ない社会、中間層の厚みのある社会を作っていく中で、持続的な経済成長を実現していく、経済を大きくすることは大事だけども、それが自己目的化してはいけない。経済を大きくすること良くすることは、一人一人が幸せになるための手段だということをしっかり肝に銘じて私たちはがんばっていきたいと思います。
参議院選挙でこの格差社会に対してしっかり歯止めをかける、そして憲法の平和主義、いま日本は大きな分岐点、平和主義を捨てて海外で普通に武力行使できる国になってしまうかもしれない。だからこそ私たちはこの参議院選挙でしっかりと歯止めを行わなければなりません。産別の候補者の皆さん、民進党を支持していただく皆さん、しっかり私たちは結果を出していきます。ともにがんばっていきましょう。