1月4日に召集された第190通常国会は、2016年度予算の3月中の成立を受け、4月中旬から厚生労働関係の法案など各省庁の予算以外の審議が本格化している。しかし、今回は3年に一度の参院選挙(半数改選)の投開票を7月(公示は6月下旬予定)に控えていることもあり、政府をはじめ、与野党いずれも選挙を意識した言動が目に付く。既に「終盤国会」の様相を呈している状況だけに、今後の政治日程の着眼点とポイントを整理する。(報道局)
会期末は6月1日、会期延長は最大で一週間前後
衆参ともに国会は、厚生労働委員会や法務委員会、総務委員会などの常任委員会が週に2回の定例日を定めて、それぞれの委員会の与野党筆頭理事らの調整で上程されている法案審議の順番を決めて進んでいく。もちろん、折り合いがつかない時は、多数の議席を有して政権を担っている与党が審議順や採決期日を各理事会の多数で決めることもある。
参院選がない年は、概ね6月のいずれかの日に迎える会期末を前に、1カ月程度の会期延長を首相が決断する。昨年のように、「95日間延長」という異例なことも可能だが、今年は3年に一度の“制約”があるため、6月1日の会期末をにらみ最大でも延長は一週間前後となる見方が支配的だ。
では、予定通りの会期末で閉会した場合、4月18日現在においてどのような審議日数が見込めるのか。18日から会期末までは45日間。特別の事案が発生しない限り審議日程を組まない土日・祝日を除くと、春の大型連休を挟むこともあって平日はこのうち29日間。さらに、5月26、27日の平日に伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)や関連行事などがあり、実質的に国会で法案審議ができるのは30日間足らずと言える。特別委員会は別として、上記にも触れた通り各常任委員会の定例開催日は週2回なので、超党派の議員立法かよほど与野党が合意した法案でないと、政府が今国会に上程している法案の成立本数には限界ある。
例えば、厚労関係で提出されている「高度プロフェッショナル制度の創設」などを盛り込んだ労働基準法改正案は、与野党対決法案の筆頭格であるだけに、昨年の通常国会に続いて2国会にわたり「審議入りもできない」という可能性が濃厚だ。労働者派遣法(平成27年改正)も3国会にまたがったが、2国会目には衆院で首相入りの委員会審議(野党は欠席)も行われており、それ以上に法案提出から「間延びした塩漬け状態」となっている。
似たようなことは、昨年の通常国会の会期末ぎりぎりで、審議入りの体裁だけ整えた衆院法務委員会における新法「外国人技能実習適正実施法案」にも言える。残りわずかの今国会と、参院選後の秋の臨時国会で注目される2法案だ。
条件付きで「18歳選挙権」の初の国政選挙となる参院選
世間一般的には、今夏の参院選で「18歳選挙権」による初の国政選挙が実施されると認識されている。ただ、厳密に言えば、この改正公職選挙法が施行されるのは「6月19日」であり、それ以前に公示されると「18歳選挙権」の施行前ということで現行(20歳以上)通りとなる。もちろん、若者の政治意識の醸成と意思の反映などを考慮すると、政府はこの一般認識を無視できないだろう。
参院の改選議員の任期は7月25日だ。こうした諸般の事情を整理、集約していくと、自ずと参院選の公示日や投開票日は「異例の対応の可能性」を含みながらも限られてくる。参院選は公選法で最も長い選挙期間となる17日間が基本。投開票日を任期満了前までの日曜日とし、「18歳選挙権」施行後の期日でかみ合わせると、
(1) 6月23日公示、7月10日投開票
(2) 6月30日公示、7月17日投開票
(3) 7月 7日公示、7月24日投開票
――の3案が浮上してくる。
しかし、いずれにも一長一短があるのも確かだ。(1)を選択すると、公示日が沖縄の「慰霊の日」と重なり、そこは避けるべきではと言った意見が沖縄選出の閣僚からも挙がっている。(2)にすると、投開票日が3連休の中日となり、たとえ期日前投票が浸透してきているとは言っても、マスメディアや野党などに「低投票率を狙った」などと、政府・与党としてマイナスイメージになる攻撃材料を与えたくない。(3)は夏の本格的な行楽シーズン突入であることと、任期満了の前日といった事情がある。
それぞれの一長一短を回避する方法として、(1)を選択しつつも公示日を
1~3日前倒しする手法がある。平易に言えば、参院選の選挙期間について公選法は最低でも17日間の確保を明記しているのであり、18日間、19日間などを禁じている訳ではないからだ。先に述べた「異例の対応の可能性」とはこのことを指す。
終盤国会の日程感と参院選の期日のパターンについて要点を整理してきたが、24日投開票の衆院補選となる北海道5区と京都3区の結果をはじめ、複合的な要素が入り混じりながら5月末まで国会の動きが激しくなる。そして、衆院解散による7月の衆参ダブル選挙の可能性も否定できない。また、判明しているだけで40人を超える死者と1000人規模の負傷者が確認されている熊本地方で14日に発生した地震など、予期せぬ天災も政治日程や政府が予定している政策方針に影響を与えかねない。大型連休を挟んだこの一カ月は、その後の政治動向をうらなう意味で最も注目される時期となる。